ミスコンについて_3.当日レポート編

みぎきです。
当日レポート編なのにまた自分語りが多くなってしまいました。自己中なのがバレる……
でも他団体様についてもたくさん語っています!

11/20、18時からリハーサルが始まるということで、今年はいつも以上に堂々と青空劇場でデバガメしていました。自分のリハーサルは19時からです。
しかしどうやら18時からリハーサルというのはフェイクだったようで、19時の私たちがこの日は1団体目。寒い思いをしただけです。辛い。

さて今年の団体数は8団体。もともとは10団体でしたが、調布祭の別イベントとの兼ね合いで、2団体は辞退したそうです。
それでも実質10団体集まったと考えると、昨年度のちょうど2倍の団体数。ミスコン存続を憂いていた私たちには非常に嬉しいことでした。
というのも、さまざまな事情があって、2016年度からミスコンの規模はあらゆる点で縮小気味に。団体数は年々減っていき、お客さんも少なくなり、青空劇場から屋根が消えるなんて珍事まで。
そんな中、前年度優勝者として春に「ミスコン学概論」なんてものを主催したりしました。ミスコンに興味がある方に来てもらって、ミスコンの概要、参加する際の注意点、勝つためのコツなどを、過去のミスコン参加者により講義します。これがどこまで今年度参加者に影響したかは分かりませんが、価値のあるイベントだったことは確かだと思います。

リハーサルデバガメ前、思い出すのはその日の昼頃に発表された「団体紹介ツイート」。これは去年から始まった試みでして、各団体が任意で用意した文章と画像を用いて、ミスコン公式ツイッターさんが宣伝してくれる、というものです。
今年はこの団体紹介ツイートが、各団体が自らの情報を公開する1番最初のメディアとなりました。したがって私は発表されると同時に食い入るようにそのツイートを見ていたのですが……
その時点で思いました。「今年はなんかレベル高い」と。

下坂46さんは五人ユニットによる異質な世界観のダンスカット。
ダンスロイドさんは自分たちがストリートダンス同好会所属であることを公言。
Cutie and Oily Rainbow Girlsさんはネタ感を出しつつも、中には高クオリティな女装写真も。
そしてMICS COMPANYさん、たかはられんさん、バーチャル関西さんは、直接の知り合いであったり、知り合いから言伝に聞いていたため、レベルが高いことに間違いありません。
vivid_rabbitさんは画像が無く文書のみだったため、この時点では印象が薄かったです。しかしその文章は2016,2107年度優勝者をなんとなく彷彿とさせることを、この時点で既に感じていました。

そんなわけで期待と不安を胸にリハーサルを見ていましたが……
ツイート内容から感じられるレベルの高さより、倍くらいレベルが高かったです。各団体の細かい感想については当日舞台レポートで記述します。
私は自団体の決勝進出が危ういレベルだと本気で思いました。ただでさえ、ミスコンにおける演技が審査員にどういう評価をされるかなんて、全くわかりません。それに加えて、ダンス大会として見ても、女装大会として見ても、私の団体は決勝進出のレベルに自信を持って達しているとは言えませんでした。私たちのレベルが低いのではなく、他団体のレベルが高すぎるのです。今大会ではただ一点、純粋な舞台の作り方、つまりパフォーマンスの魅せ方という点が私たちの最大の武器になると理解し、本番当日に望みます。

ちなみに去年も「決勝行くの無理じゃね?」という不安をリハーサルで抱き、大いに焦りました。しかし今年は焦りという感情は少なく、大会レベルが高いことの嬉しさの方が勝っていました。前年度優勝していることと、高学年勢として大会自体の成功を願っていたことが影響していると思います。なんかこんなこと言うと胡散臭いけどね。

そして本番。11/24です。
ずっと雨予報だった24日ですが、私の執念を感じる(=キモい)てるてる坊主大量錬成と、仙川二郎のお陰で晴れました。
しかし最終リハーサルが無いというトラブルもあり、「今日本番ってまじ???」みたいな気持ちで控え室入り。
若干制限時間オーバーで煩雑な衣装着用とメイクを済ませ、青空劇場テントへ向かいます。

そういえば、今年の控え室は東6の一室でした。なので控えテントから控え室に戻ることが非常に難しく、その事が自分たちの演技に後々ダメージを与えることになります。

空劇場テントに到着。四年目だし見慣れたもの……と言いたいところですが、控え室の場所が違う上に、ストーブがついてない関係で、だいぶ見た目が違いました。ミスコン当日がこんなに暖かいなんて有り得ない……

そしてついにミスコンが開幕!!!
と思ったらプロジェクタートラブル連発。今年はプロジェクターの扱いがずっと大変だった様子でした。
余談ですが、去年のプロジェクター映像は16:9で横長に表示可能でしたが、今年は4:3で小さめの表示しか出来ないみたいでした。16:9の映像を作った私達は、4:3の範囲に無理やり16:9映像を表示するしかなかったみたいで、想定より小さめの字幕表示になってしまうという。裏目ったわね。

もたついたものの無事ミスコンオープニングが始まりました。
司会さんとは何回も打ち合わせをしているため、ミスコン参加者にとって知らない間柄じゃありません。そんな人の女装姿が見られるのもミスコン当日のお楽しみですね。見た目の印象はやはりチャイナ服の奇抜さが光ります。あのチョイスは勇気ある……素直に尊敬です。

さてここら辺で気がついたのですが、やはり今年は去年までより気持ちに余裕があります。いつもだったら「自分の演技に集中していたので覚えてません」としか言えないのに。

そして審査員紹介。非OB枠としては、メガロス調布からの審査員参戦が印象的でした。審査基準ではダンスを見ることを匂わせており……ビビりました。ダンスで採点されたら私はやばいんだが!
OB枠としては、まず、なくるゆき先輩。常任理事国です。なくるさんの女装は多々見てきましたが、今年の女装が1番好きです。ほんと似合ってました!
OB枠としてもう一人は、ぴぃ先輩。ん?ぴぃさん? ぴぃさんさっきまで(控え室入りする直前)まで話してたんだけど?? まんまと騙されてしまいました。

今年も始まる0団体目、OB演技!
やはりコール練習も兼ねているみたいで、楽天生命パーク……じゃない、音ゲーのように映像を用いてお客さんへコールを促していましたね。
さも簡単かのように演技されていましたが、スーパーロングウィッグで踊るぴぃさんの技術……只者ではありません。
毎年「現役参加者の演技を食うレベルの演技」をするOB演技ですが、しかし今年度の現役だって只者ではありません。私はワクワクしていました。

あ、今更ですけどOBじゃなくてOGって書くべきですか???

予選の部

演技については私の個人的な解釈でお話しさせていただきますので、間違っていたらごめんなさい、、

1.下坂46

下坂46さんには青劇テントで既にフライングお声かけ(事案)をしてしまいまして、「リハーサルで見ました。演技めっちゃ好きです。頑張ってください」というようなこと(とそれ以外にも色々)をお伝えしました。本当にすごいのです、この団体。

まず、演技前の紹介文によって世界観が説明されます。端的に言うとそこは未来の世界でして、「クローンアイドル」という存在が居るとか。非常に気になる世界観です……!

で、舞台は映像によって導入します。ある日、クローンアイドルである五人の姿が忽然と姿を消す。焦ったクローンの管理者(?)の男が辺りを見回すと、ボードには「調布祭」の文字が。なんとクローンたちは勝手に調布祭に行ってしまったのです。
いやもうこの時点で独特の世界観づくりが面白すぎます。

そして場面は調布祭当日、ミスコンの舞台へと切り替わります。そこには五人のクローンが……あれ、一人しかおらんやんけ。
なんとなんと、一人の団体にも関わらず、他四人分のダンスを全て一人で収録し、それをバックダンサーとして映像に流すという神がかり的な発想によって作られた舞台なのです! 微妙に異なるクローン四人の映像と見事なシンクロを見せるセンターのダンス。そして何より、独特な世界観を見事に表現するロボット的なダンスの振り付け! 私、ダンスジャンルとか詳しくないのですが、このダンス、既存の振り付けとして存在するのでしょうか。どちらにしても、見てて飽きがこないどころか、じわじわとその世界観の深みへとハマってしまうような、中毒性のある舞台でした。

あと地味に凄いと思ったのが、ダンスの導入。演者が「地面に寝た」状態からダンスがスタートします。こういった地面に座るとか寝るといった動作が入ると、演者の動きの幅が広がるのですが、衣装の形状や舞台の汚さを考えるとなかなか採用しにくい動作です。特に今年は雨が降っていて舞台が乾ききっていない中、躊躇いなく寝た状態になるその姿に、演者としての情熱を感じました。

以上、舞台を作る上での「才能」という点で、下坂46さんは8団体中で圧倒的なものを持っていたと思います。私が特別賞決める権利持ってたら絶対に下坂さんへ渡します。

2.ダンスロイド

ストリートダンス同好会ということで、ツイートにも質の高いダンスを武器にすると書かれていた団体。ダンスを重視する団体が多いミスコンの舞台に大きな波紋が広がりました。

ダンスロイドの「ロイド」の部分はやはりボーカロイドのロイドでしたね。予選の選曲は「ダンスロボットダンス」でした。
まず特筆すべきは、この舞台、とある踊ってみた動画の「完全再現」であるという点! まなことりりり、で検索検索! ダンス振り付けはもちろんのこと、衣装である白衣やヘンテコなサングラスまで再現されています! 元ネタでも印象的な「サングラス投げ渡し交換」も舞台上でしっかり挑戦されていて、そして元ネタ通りちゃんと失敗! 素晴らしいです。
そして肝心のダンスですが、ストリートダンス同好会の方であるということを考えると、個人的にとても意外な選曲、というか振り付け選びでした。この振り付けはダンス力で殴るというよりは、ダンサーの可愛さとダンスのキレで魅せるダンスだと解釈しています。つまり「ミスコン舞台」としてのダンスをしっかり想定した上での振り付け選びなんだなあと思いました。そういう意味で評価したいポイントです! で、逆に言えばスト団という強みを活かしにくいダンスなのでは、と思っていましたが、舞台上での圧倒的な「踊り慣れ」感を見せつけられてそんな心配は消え去りました。上手いと言うだけではなく、楽しんで踊っている「ライブ感」があったのがすごく良いです!
細かいところを言うと、ターンの仕方が大好きです。かっこいい。

ここまで評価ポイントを積み上げておきながら、ダンスロイドさんにはまだ武器があります。それは、写真部門で準優勝を飾るほどの女装力! 写真準優勝自体は一人の受賞でしたが、もう一人の方もそれに並ぶほど女装力高かったです。

以上、ミスコンで戦うためのポテンシャル(女装とダンス)で言えば間違いなく最強の団体でした。ミスコンのちょっとしたコツさえ掴めば簡単に受賞レベルになる気がします。来年も出ませんか!!

3.たかはられん

私が言うまでもない暴力的な魅力の持ち主です。逆に感想言うの難しいかもしれない!

下坂さんやダンスロイドさんに対して何が凄いかと言うと、表現しにくいですが……一言で言うと「迷いの無さ」でしょうか。固さがない、とも言えるかもしれません。
舞台内容としては、私が元ネタに詳しくないためかもしれませんが、「ひたすらダンスを踊る!」といった内容に思えました。

さて、電通大ミスコンは「コスプレ大会」のような性質も秘めていると思います。すなわち、演じるべきキャラクターと、それを演じる実際の演者が居るわけです。そこで、そういったキャラクターと演者という二人の人物の「ずれ」が非常に舞台に響いてしまいます。いまいちキャラクターになりきれていない、役がハマっていない、恥ずかしさがある、というような「ずれ」は、演者の動きに迷いや不安を生み、その不安定さはお客さんや審査員にまで伝わります。それを無くすためには、「ずれ」を無くすことで演者の動きから迷いを消す。要は自信満々に演技すればいいわけです。

その自信満々という点について、たかはられんさんを超える演技を私はみたことがありません。
一点の曇りもないそのダンス、笑顔。そこに演じるべきキャラクターと演者なんていうややこしい関係は存在しませんでした。ただそこには、たかはられんが居た。ただそれだけなのです。
迷いの無い演技が出来れば、例えウィッグを脱いだとしても舞台が、女装が、変わらず成立する。迷いを消す、という要素がいかに重要かを、彼女は示してくれました。

加えてダンスそれ自体も高精細で、かつ女性的振る舞いも欠かさない。こんなの優勝じゃん……

4. vivid_rabbit

こちらは私にとって非常に分かりやすい強みを持つソロ団体でした。
すなわち、減点対象を見せず、加点対象をたくさん見せる!!

ミスコンってどうしても女性的な振る舞いについて、減点的な目で舞台を見ちゃうんじゃないかなって思います。元が男なので、振る舞いに男らしさが出るとどんどん減点されてしまいます。特にダンスをパフォーマンスのメインに据えていると、ダンスのクオリティと女性的な振る舞いを両立させることにとても苦労するんですよね……
それに対して、vivid_rabbitさんは全くの隙がありませんでした。かなりの反復練習を感じるダンスからは、全ての動きに女性らしさの芯が通っています。そして、キャラクターボイスを使う場面では、まるで本当に自分の声であるかのように振るまっていました。正に、完璧。下手したら減点になるようなシチュエーションを、むしろどんどんと加点要素へとしてしまう様は恐ろしいと言ってもいいほどです。
というのも、私が自分の団体の予選敗退を危惧するに至ったきっかけとして、この団体のリハーサルを見たことが一番大きかったです。それくらい、このタイプの演技ができる人は過去の大会で猛威を振るってきました。

5. MICS COMPANY

ここまでの団体が持っていた全ての強みを同等前後のレベルで持っていたのがMICS COMPANYさんなのではないか、と思います。ダンス1つ取ってもたかはられんさんと比べて遜色ない時点でヤバいです(裏事情を知ってる方には変な言い方だとおもいますがご勘弁ください)。

この団体の強みは、「暴力」だと感じました(誤解を生む表現)。後々説明します。
または、よく話題に上がる「お客さん受け」という点で、この団体は圧倒的だったかも。私はお客さんのウケを狙ったら全滑りして予選敗退した記憶しかないので、お客さん受けが良いか悪いかを感じ取る力がありません……

演技内容は、まずはプロジェクターを用いたコントから始まり、途中からダンスパート、と言った感じ。なんか私の2年前の記憶が蘇りそうな構成……といってもクオリティ段違いでしたね。
そも、ショートコントや小ネタを挟んでのダンス披露というのは、電通大ミスコンにおいてほんの数年前まで数多くの結果を残してきた超王道演技です。が、それをここまで映像を作り込み、ここまでダンスの精度を上げた演技を私は見たことがありません。今大会、私史上最強の要素が多すぎる!
ダンスはその長身から繰り出されるダイナミックさ。基本ステップを踏むだけでも見栄えの暴力でした。加えて身長という要素に頼らない「精度」の暴力。ダンス中、最初の1秒から最後の1秒まで、「やばいやばいやばい……」という感想しか出てきません。何故かというと、MICS COMPANYさんのダンスはミスコンの女性的な見栄え、そして舞台としての見栄えを成立させるのには非常に難しい振り付けが多かった印象なのですが、その難しさを全て「精度」で乗り越えているように感じました。正に暴力です。それはダンスだけではなく、動きの精度、表情の精度、振る舞いの精度、どれか1つでもレベルが低ければ噛み合わなかっただろうその要素をすべて高いレベルに仕上げて収束させる。本人が計算していたかは分かりませんが、私には計算し尽くされた演技、という風に映りました。

ダンス1つについては、どれくらい凄かったか伝えるのに、涼宮あつきさんを彷彿とさせた、という言い方をさせてください。
涼宮あつきさんはブレイクダンスにおいて数々の大会で優勝、世界大会でも結果を残しているすごい人。そしてその凄さを活かして無駄のない無駄な動きでもって数々の変態的踊ってみた動画をニコニコ動画にアップロードしています。ダンス興味なくても楽しめるくらい変な振り付けなので是非見てみてください。
MICS COMPANYさんのダンスはそんな、超変態的な振り付けと超変態的な精度を両立させた素晴らしいパフォーマンスでした。

6. 博麗神社萬歳楽

筆者は感想に飢えています。感想ください……ください……
あ、ネガティブな感想は結構です(クソザコ向上心

演技については他の記事で書きまくったので、当日のハプニングについて。
まず、滑りました。舞台がめっちゃすべる。これ、どういう靴を履いているかによってかなりの個人差があったみたいで、相方はまったく滑らなかったみたいですが、私は3回くらい転びそうになりました。それ以外の部分でも、転ばないように加減して踊ることになりました。他団体さんはどうだったんでしょうか……
次に、落ちましたね。霊夢の髪飾りが。これ、ちゃんとフル装備練習の時にダンスを通して踊っても落ちない固定方法を見つけたんですよ。当然本番ではその付け方をしていたのですが、落ちましたね。泣きそうになりました。当日、冗談で「衣装がパージして舞台にどんどん溜まっていくんだよねww」みたいなことをたかはられんさんに言ってたら一部現実になっちゃいました。

あと、他で書き忘れてたのでここに書きますが、霊夢が陰陽玉を操っているような演出は「フェイクインタラクション」という手法の1つです(私の専攻分野なので難しい言葉使うよ!)。何らかの装置を用いて映像を本当に演者が操っていた場合、インタラクティブな演出だとか、インタラクションがある演出だとか言いますが、この舞台で霊夢は本当に陰陽玉の映像を操っていたわけではありません。嘘っこのインタラクションということで、フェイクインタラクション、です。
ミスコンで映像を用いる人にはオススメの演出手法ですが、プロジェクター使えないと練習が難しいです、、

7. Cutie and Oily Rainbow Girls

どうしてこんなになるまで放っておいたんだ……!(もとからこんなんです)

Oily担当とCutie担当のメイン二人と、オタ芸集団によって構成された団体。メイン二人が並んだ時の、芸能人的な独特のオーラは今大会で誰も持ち得ない魅力でした。

素早いテンポで次々と繰り広げられる楽曲と歌声は、予測不可能回避不可能。他の追随を許さない頂点的な個性と、オタ芸入り乱れる奇妙な世界観でもって、お客さんも、恐らくは演者も、休まる暇がありません。
この団体、あまりにもすごすぎて、かえって何が凄いのか理解しづらいのですが、強いて言語化するならば「絶対に"秩序"を作らない」という舞台構成でしょうか。
ミスコン舞台部門は女装、映像、音楽、ダンス、歌、劇、コント、脚本など、数多くのコンテンツが融合した総合芸術的な側面を持っています。そのため複数コンテンツを同時に用いる場合、それらをどのように融合して1つの舞台にまとめ上げ、秩序化するのか、というのが大きなポイントになりがちです。しかし意図してなのか意図せずしてなのか、Cutie and Oily Rainbow Girls さんはこの秩序化を一切せずに、コンテンツとコンテンツをひたすらぶつけ合って混沌空間を生み出します。女装、歌、振り付け、そしてオタ芸という4要素が不協和音を鳴らしつつ、ときどき漸近して融合を見せるかと思いきやすぐに離れていく。それなのに、1つの舞台として演技文脈を成立させているという矛盾。まさにミスコンにおける前衛芸術だと思いました。一見で楽しみ尽くすことは難しいので、決勝含めて何度でも見たくなります。

8. バーチャル関西

電通大ミスコン初のVtuber女装ですね。青空劇場に立った記念すべきVtuber1人目は、さくさくぱんだこと笹木咲さん。にじさんじじゃねーか。

演技内容は、ちょっと詳しく無いので適当なこと言いますが、演者が歌を歌いつつ、青空劇場をナイトクラブやディスコに見立て「お客さんにダンスをさせる」という内容。筆者のような「お客さんをあえて一切盛り上げない」演技とは真逆の内容と言えるかもしれません。ジャンルとしては、去年のミスコンで初出したアニクラを思い出します。
バーチャル関西さんは歌、映像、音楽そしてトークを用いてお客さんを熱狂させました。青空劇場全体がミスコンステージとなったかのような、大会史上最も規模の大きな舞台になったのでは無いかと思います。ここにもありましたね大会史上ポイント……

そしてこの演技内容はまた、ミスコンというコンテンツに大きな一石を投じたのではないでしょうか。すなわち、「舞台上だけが舞台じゃない」という問題。
ここまで巧妙にお客さんを盛り上げたその手腕こそが、バーチャル関西さんの最大の魅力だと思います。しかし審査員として舞台を見た場合、審査席の位置としても、評価基準としても、青空劇場全体を俯瞰した上で演技評価をするのは難しいと思います。どんな点数が付けられているのか非常に気になりますね……
余談ですが数年前のミスコンで「ボルテージ点」というのが導入されたことがありました。これはお客さんがどれだけ盛り上がっているか、という要素を審査員の目線で審査員が評価するというもの。ここまで明確に審査基準化してしまうと私たちが困りますが、しかしボルテージを自由加点要素として捉えるのは大事なのかもしれません。

また、そういった審査的な問題を抜きで考えると、このようなお客さんが一緒に盛り上がってくれる舞台は素直に羨ましいと思いました。自分には出来ないからこそ憧れます。こういうのやりたい。わたしもやりたい。

予選結果発表

予選結果発表で壇上に上がれるのは1団体につき1人という話でした。私は自分が壇上に上がるかどうか非常に迷いました。

筆者が所属する博麗神社萬歳楽は、予選が霊夢(私)主人公、決勝が魔理沙(相方)主人公となっています。予選でも決勝でも、主人公じゃない方はかなりモブです。なので、もしも予選で負けたら私は相方への申し訳なさで立ち直れなかったかもしれません。というのも、予選は私が主人公であるため、負けたとしたら私の責が大きい。しかも本番の演技で私は髪飾りを落とすという失態をしていました。これで負けたら私のせいだ私のせいだ私のせいだ私の(略
レベルが高い大会だったので、ただでさえ決勝枠が重いのに、私の衣装ミスも加わって負けているのではないかと本気で思っていました。

いや本当に、生きた心地がしませんでしたこの時は。もしも負けているとしたら、せめて相方に壇上に上がってもらった方が……とか考えていました。いま思うと、二人とも壇上に上がりたいのは間違いないんだから、そんなに申し訳ないなら相方に譲れよって思います。
でも気持ちに余裕がなくて、「もしも負けてるとしたら私の責任なので、私が責任を負ってきます」という謎理論でもって私が舞台に上がらせてもらいました。

まあ、なんか全員舞台に上がることが出来たんですけどね。事前情報では一人が舞台に上がるって話だった記憶があるのですが、勘違いだったみたいで、普通に二人で壇上に上がります。

で、壇上は、トラウマ空間。一年で最もキツい時間です。去年の優勝で少し緩和はされましたが、予選敗退を2度味わった仄暗い記憶がやっぱり蘇ります。

まず決勝1位。
MICS COMPANYさん。

え、まじ?
ここでなんかさっきまでの不安とかトラウマとかが吹き飛びましたね。そのくらいの衝撃でした。
なんでかって、MICS COMPANYのユーキ君とは縁というか因縁というか、あれこれありまして…… え、語っていいこれ? 語りますね!

事の発端は2017年。
私達はPumpkin headsという団体名でミスコンに出場。トークパート(ショートコント)からのガチダンス(おこちゃま戦争)という王道的演技で見事に予選敗退しました。負けてんねぇ!
なお私達の初出場は2016年で、同じPumpkin headsという名前で出場。その時はボロボロの最下位です。
2017年度はそんな悔しさを払拭するため、2016年の失敗を深く研究し、または勝ち上がった団体が持つ魅力を研究し、「これなら勝てる」とい自信を持って挑んだ舞台でした。良い舞台になったと思います。
しかしその上での予選敗退という結果が重くのしかかりました。どれくらい落ち込んだかというと、ここまでの人生で間違いなく1番落ち込んだ瞬間です。誇張なしです。大袈裟じゃありません。何事も、全力の本気で挑んだ上で負けるというのは、心が折れると思います。
2年間、ここまで頑張って来たのに、私達の舞台はなんの魅力もないんだなあと。この時は本気で思ってしまいました。
そんな心が折れた状態の私達に声をかけてくれたのが、同じ年に電通大三界大戦として魔理沙役で参加していた件のユーキ君。私達の演技が良かったと。来年は同じような演技を自分がして、そして勝ちたいと。そう言ってくれて始めて、負けたけどミスコン舞台に出て良かったなと、心から思えました。私達が2018年度のミスコンへ向けてスタート出来たのは、ユーキ君のおかげだと思います。
そんな2018年、わたし達は作風を大きく変えることになりましたが、予選を1位で通過してそのまま優勝。しかしその傍らで、ユーキ君は2度目の予選敗退。となるともう、自分たちとユーキ君を重ねて見てしまうのは仕方ないことだと思います。

そして2019年、ユーキ君が予選を1位通過。自分のことのように嬉しかったのは、同じ大会に出場する現役としては失礼だったでしょうか。

さて思考が混線していた私達ですが、予選2位通過の団体発表で我に帰ります。

予選2位。
博麗神社萬歳楽さん。

「よっっっしゃ!!!!」
一瞬キャラ忘れましたね。女装レイヤーとしての自覚が足りない。でも嬉しかったし、相方がメインの演技をちゃんと披露出来るということで、ほっとしました。

そして、1位MICS COMPANY、2位博麗神社萬歳楽となると……思い出すのは再び去年の大会。
2018年、2年間苦渋を舐めた私達が1位通過したとき、2位通過は前年度優勝者のねいぴあさんでした。
2019年でも、意図せずして全く同様の構図が生まれてしまったのです。ミスコンには何か超常的な意思でも働いているのでしょうか。

でも今年は3位枠がありますからね。去年の決勝は予選2位までの進出でしたが、今年は去年と似た構図になったとはいえ3位枠の団体も優勝争いに加わります。

そんな3位の団体は。

あっれーわ、
だれっだ、
だれっだ、
だれっだ、
あっれーわ、
たかはら!(字余り)
たかはられーん!↑(字余り)
たかはられーん!↓(字余り)

てっ、てれ、てれ、てれ、てれ、てっ、

ネタ団体の、名を受けて
ウィッグを捨てて、
戦う男(女の子やぞ)


予選3位。
たかはられんさん。

非常にレベルが高かった今大会。ある意味もっとも注目が集まる最後の希望、3位の枠を勝ち取ったのは、たかはられんさんでした。
たかはられんさんの前川さん(ややこしい表現)は去年、ユーキ君の相方としてミスコンに初出場し、予選敗退ではあるものの初出場で3位を獲得。そして今大会、ソロ出場で再び3位を勝ち取り決勝進出。とんでもない化け物を生み出してしまったなあ!

となると決勝は、去年は仲間として舞台に立ったユーキ君前川君が、お互い敵として戦いつつ、前年度優勝者である私達と優勝を争う……みたいな構図になるわけです。そんなことある?
過去大会経験者が強いと言えばそれまでかもしれませんが…… ほんとに信じられない思いでした。
さらにはMICS COMPANYさんが決勝の演技順ラストを獲得。これも去年の私達と一緒。そして根拠はありませんが、事実として大トリの演技がそのまま優勝する確率は非常に高い。

もう、お膳立てがされ過ぎてるんですよ。舞台上の3団体で顔を見合わせましたね。みんな思っていたのではないでしょうか。パターン入ったなこれ……って。

さてここで改めて言いますが、結果として予選敗退した団体様も皆それぞれ個性的で本当に素晴らしい演技でしたし、すごく楽しませていただきました。間違いなく、それぞれの団体が、誰かにとっての1位だったと思います。まだ出場機会があるならば、再びミスコンの舞台に立つ日を、私は待っております。

次に博麗神社萬歳楽さんが決勝演技順1を獲得。私のことですが。
ここでもちょっとハプニングがありまして、くじ引きを引こうとしてついくじ引きの中を覗いたらですね、思いっきり見えちゃったんですよ。それぞれのくじと書いてある番号が。
演技順的には2番が欲しかったですが、それはたかはられんさんも同じだろうなと思い、申し訳なさからわざと1番を引かせていただきました。
(裏話ですが、「MICS COMPANYさんと博麗神社萬歳楽さんに挟まれるよりは1番目の方が気楽でしたwwww」と、たかはられんさんから言われちゃいました。ゴメンナサイ!)

でもって控えテントへと一時帰還。
決勝進出でほっとした気持ちもありましたが、すぐに自分らの演技が始まるので気持ちを切り替えます。予選が終わったのにまだ演技が出来る。その贅沢さというか、ある意味では重さを、感じていました。もちろん嬉しさも。

さて予選で落としてしまった霊夢の髪飾り(リボン)ですが、当然、決勝では落とさないように対策したい。だけど、もうどうしようもありませんでした。今年は控え室が東6号館であり、例年より遥かに遠いんですよね。その都合で、わたし達が予選演技を終えた時間以降は既に、大会のルールとして控え室に戻ることは不可能でした。控え室に戻れば補助のヘアゴムやピン、ハードスプレーや接着剤までもが有るのですが、控えテントには何もない。仮に、あらかじめ持ってきたとしても、個人の荷物を沢山置くようなスペースはありませんでした。
そのため、決勝はリボンを落とすこと前提で舞台に上がります。それが残念で仕方なかった。どうあがいても、公開の残る演技になるということだから。リボンを付けずに舞台に上がるという選択もあるんですけどね。でも、途中で落としたとしても、これが無ければ霊夢ではないという拘りがありました。

決勝1 博麗神社萬歳楽

頭真っ白でした。でも他の団体の多くも同様に、真っ白だったみたいです。
今年の演技、どうだったでしょうか。

決勝2 たかはられん

予選で魅力は語りつくしました。決勝は練習してないみたいな話を聞いていましたが、その魅力は予選から全く色褪せることがありません。

決勝3 MICS COMPANY

MICS COMPANYさんは予選と明らかに異なる演出がありました。ラスト曲の入りと、ラスト曲中の映像演出ですね。ラスト曲の前に、長めの映像演出を入れることで、その間に衣装をチェンジ。そして舞台に上がったら、豪華な映像を背景にして、ラスト曲「乙女解剖」をその類稀なるダンスで魅せてきました。
これは私じゃぜっったいに出来ない舞台構成です。私は舞台構成に密度を求めるというか、とにかくお客さんを飽きさせないように細かい変化を散りばめる癖があります。なので、衣装チェンジのための長い映像演出は、私だったら恐ろしくて出来ません。
しかし映像が終わって、演者が出てきた瞬間。お客さんの盛り上がり方は尋常じゃありませんでした。ここの衣装チェンジの見せ方が、上手すぎるんです。
まず、衣装チェンジしたことを主張しすぎないこと。芸人さんのボケが「強すぎる」とか「推しすぎてる」みたいなのあるじゃないですか。衣装チェンジも、チェンジしたことの主張が強いと場合によってはダサくなりがちだと思います。しかしMICS COMPANYさんはチェンジした衣装で、横を向きながらスッと入ってくるわけです。もうそれがカッコいいですよね。そして舞台としては、長い映像を挟んでるので、そのぶんだけ現れた演者にとても強い注目が向きます。だからこそ、主張しなくても衣装チェンジがお客さんに強く印象づけられる。余計な情報を出さず、衣装チェンジという武器を最大限に活かしている演出になっているわけです。すごい。
そしてそこからの映像。今年は映像が少し流行りましたが、この手のエフェクト的な映像は今大会では未出だったので、かなり新鮮な表現として映りました。これが非常に強い表現力を持つ映像でして、下手したら舞台上の演者を食ってしまうほどのものでした。が、そこはMICS COMPANYさんのダンス。高クオリティなダンスは映像を完全に支配下に置き、これでもかと相乗効果を発揮して、1つの演技として筆舌出来ないほどの超越的な完成度でした。

この演技を見て、もうMICS COMPANYさんの優勝を確信しました。いや、より正確に言うならば、自分が負けたことを納得しました。
今大会、誰かに勝っていると自信を持って言えないのと同時に、誰に負けているとも思っていませんでした。でも、この演技を見て、明確に、自分が負けていることを理解させられてしまいました。それはある意味、負け方としては幸せな負け方だったと思います。

そういえば、決勝3団体目が始まる直前、居ても立っても居られなくてついユーキ君に「頑張ってください」って声をかけに行ってしまいました。
これも、同じ舞台で戦う団体同士としては不適切だったかもしれません。何より、集中を邪魔するとも取れる行為です。申し訳ありませんでした。

決勝結果発表

MICS COMPANYを祝福したい!!!
たかはられんに勝って準優勝したい!!!
そんな気持ちで壇上に上がります。予選と違い、特に緊張してはおりませんでした。

2位。
博麗神社萬歳楽。

優勝を逃したとも取れる順位ですが、優勝枠は私の中でもう決まっていたので、これ以上ない結果です。私は素直に壇上で喜んでいました。
実際、今大会で2位。誇れることです。そもそも予選突破した時点でめちゃんこ凄いんですよ。

2016,2017年にメイクを伝授してくださった鮎さん、2016,2019年にナレーションを担当してくださったWesさん、毎年全力で舞台に取り組んでくださる各年度の企画さん、お借りした楽曲の製作者であるRD-sounds様、2017年度から励ましをいただいていたユーキ君、2018年度に待機テントのハイヒールを届けてくれた前川君、今年度共演してくださった団体の皆様、毎年応援してくださるミスコンの先輩方、同じく応援してくださる研究室の皆様、理解を示してくれた家族、プロジェクター使用すら容認してくださった第1体育館の管理人様、練習前に変なことしてても黙認してくださった武道場利用サークル様、……きりがないですが、本当に感謝しております。
そして四年間も同じ舞台に立ってくれた相方に、とても感謝しています。

なんの話でしたっけ。
順位発表でしたね。

1位。
MICS COMPANY。

感情を言葉にするのが難しい。

まず、なんだかんだ言いましたが、自分にとって意外なことに、悔しいです。壇上ではそんなに実感なかったんですけど、時間が経つにつれて。
私の団体の目的は良い舞台を作って決勝までやりきることなので、必ずしも優勝を目指していたわけではないのに、それでも不思議なことに悔しかったです。

しかしきっと、私たちが優勝するよりも私たちにとって幸福な結果になったと思います。
無意識にずっと感じていた、前年度優勝者としての今大会の役目みたいなものを。これ以上ない形で果たすことが出来ました。
それはMICS COMPANYさん、ユーキ君のおかげです。ありがとうございます。
手に持っていたミスの称号というか、バトンみたいなものを、1つ下の位置からちゃんと手渡せたなと。勝手な妄想ではありますけど、そう思います。ギリギリの2位でしたけど!

おめでとうというよりは、ここまでミスコンに本気になってくれて、途方も無い時間をかけて演技を作ってくれて、本当に、ありがとうと、思います。
これ祝福じゃないですね。感謝ですね。

なんか成仏出来なかった幽霊が成仏させてもらった感謝みたいだねこれ。あるいは止まれなくなった殺人鬼みたいな。
「私を止めてくれてありがとう。これでもう誰も傷つけなくて済む」みたいなやつ。
成仏(引退)するかはわかんないけど!


打ち上げ、その他

当日打ち上げでは、色々と演技について嬉しい感想をいただきました。

まず、映像を全て私が作ったとか、Unity使ってやったことに、感心してくれる人が多くて嬉しかった。私の予想としては、電通大は技術力高いので、「俺でも作れるわ」みたいな感想になるのではないかと思っていました。嬉しい誤算。
そして陰陽玉のフェイクインタラクション。大人気でした。これは私の研究分野的に全く真新しさの無い演出なので、こんなにウケると思っていなくてびっくり。

あと、霊夢の衣装を凄いみんなに褒めていただけました。さすがstar_wxvさん……!
女装自体をこんなに褒めていただけたのは四年間で初めてです。生まれて初めて(当たり前)ナンパ紛いのこともされました。
コスプレイヤーとしての醍醐味みたいなものを初めて感じることが出来たので、本当に衣装製作者のstar_wxvさんに感謝です。
もうちょい若ければ同人イベントコスプレイヤーを志すところでしたね。
これはちょっとした裏話ですが、卒業アルバムに2018年度の私のミスコンの写真が載っていたんですよ。当時は思いっきり洋風な女装をしていて、金髪にドレスだったんですけどもね。卒業アルバムの写真見たら、顔だけが完っっ全に日本人。衣装と顔がちぐはぐだったわけです。そのことに卒アル写真で初めて気がついて、ずっと気にしていました。だから今年は、日本人というか、和風のコスプレしたかったんですよね。霊夢はうってつけでした。

打ち上げ、最後の方はまともに話し出来なくてごめんなさい。
実はあの衣装、装着者にかなり負担がかかる衣装でして、身体が限界でした。でも、せっかく褒めてくれた霊夢衣装を脱ぎたくないという気持ちもあって、無理してました。
最後の方、寝ていたのではなくて、身体の不調に必死で耐えていただけです。意識はずっとありましたが、話す余裕がなくて、寝たふりしてました。

で、ミスコン当日の話はおしまい。

また暫くして、久しぶりに研究室に行ったのですが、なんと研究室メンバーが私たちの演技を絶賛してくださいました。
アートに厳しい人たちなので、映像演出について何て言われるか不安だったのですが……むしろアートに厳しい人にこそウケる演技になっていたのかもしれません。私にとっては1位だったと、そう行ってくれたのが一番嬉しかったです。

ここまで読んでくださりありがとうございます。
期待してた話が無かったとか、もっとこれについて語ってほしいとかあればまた書こうと思いますのでご指摘いただければ。

来年は私にとって最後の年になります。身体に歳の証が出てくるにつれ、だんだん女装も厳しくなってきたしちょうどいいね。
2020年度ミスコン、また見に来てくだされば嬉しいです。

ミスコンについて_2.舞台解説編

Pumpkin_heads兼カドワナルカ楽劇団兼博麗神社萬歳楽のみぎきです。

自分の作品を自分で文章解説するのはダサい? しるかそんなもん!
今年の演技は思い入れが強いので、一つの記事として語っていきます。そもそも他人の作品の解説も混じってるし、、

まずは楽曲紹介をいたします。

予選
・幻想萬歳楽 (伝、track1、凋叶棕)
・始符「博麗命名決闘法布告ノ儀」(掲、track1、凋叶棕)

決勝
・スターシーカー (憩、track1、凋叶棕)
スターゲイザー (徒、track6、凋叶棕)
・無題「空飛ぶ巫女と普通の魔法使いのいつもの毎日」(掲、track12、凋叶棕)

伝、掲、憩、みたいなのは東方アレンジCDのタイトルです。この漢字一文字が、CDのテーマを端的に表現しています。そしてtrackは、CD内で曲が収録されている位置というか順番。凋叶棕さんは言わずもがな、サークル名ですね。

一つ一つ説明していきます。

・幻想萬歳楽
弊団体の名前、「博麗神社萬歳楽」はこの曲からとっています。この曲が収録されているCDは「伝」。東方心綺楼のラスボスに「秦こころ」というキャラクターがいまして、このキャラクターは能楽が趣味であり得意だったりします。それに関連して、この「伝」というCD作品は、かなり厳密な能楽の構成によって作られています。
能楽には五番立という、五種類の演目を決まった順に演じる方式があります。演目の内容はそれぞれ、「神」、「男」、「女」、「狂」、「鬼」。このそれぞれに対応する楽曲が「伝」には正しい順番で収録されているため、CD全体で能楽の正式な五番立になっているのです。
また、正式な能楽では、「翁」という、「能にして能にあらず」と称された儀式的な演目が最初に演じられ、最後に「祝言」を添えて全演目が幕を引く。
この「翁」に対応する楽曲がまさに、私達が舞台で一番最初に用いた「幻想萬歳楽」です。つまり、ミスコン予選の舞台、この曲は「翁」としての役割があり、能楽ではありませんが神社としての儀式的演目として、雰囲気作りに使用させていただきました。とうとうたらりたらりら。

・始符「博麗命名決闘法布告ノ儀」
こちらの収録CDは「掲」。スペルカードを掲げる、の意です。CD内では各楽曲がスペルカードとしての意味を持ちます。そのためスペルカード風に、○○符「××」みたいな形式で曲名がつけられています。この楽曲は始符。その名の通り、全ての始まりとなる命名決闘法(=スペルカードルール)が制定された儀式を表現した曲です。
告げる!の掛け声から曲がスタートし、幻想郷全体へ、新たなる定めを霊夢が布告する様は圧巻。そして曲の中盤からはスペルカードに対する霊夢の強い思いが綴られていきます。大サビ前のパートでは霊夢の実際のスペルカードに対応する、非常に印象的な歌詞が一つ一つ提示されます。
ちなみに、霊夢がスペルカードルールを布告する儀式を行ったかどうかは原作設定では不明だったはず。この儀式自体は2次創作のみの設定です。

・スターシーカー
ここから決勝。スターシーカー 、つまりは星を探す者。魔理沙の幼少期、息苦しいお屋敷の中で空への憧れを歌った曲です。
東方詳しくないと馴染みがないかもですが、魔理沙は東方において家族の存在が言及されている珍しいキャラクター。もともと魔理沙は商家のお嬢様でした。しかし魔法使いに憧れた魔理沙は家を飛び出し、自分の人生を歩むわけです。当然、家族からは勘当されています。魔法使いになるってことは人を止めるってことですし。
決勝ではそんな魔理沙が魔法使いを目指す様を描いた、予選に比べると王道的なストーリーで構成されています。

スターゲイザー
スターゲイザー、星を見る者。夢や希望に溢れたスターシーカーと異なり、魔法使いを目指す魔理沙の苦悩を綴った曲です。魔法使いになることは出来ないという挫折。実家を飛び出した後悔。しかし、それでも諦められないという決意。私は映像製作中、この曲に感情移入しすぎて意味もなく限界オタクになっていたという裏話があったりなかったり。

・無題「空飛ぶ巫女と普通の魔法使いのいつもの毎日」
これは「掲」の最終トラックに収録されている楽曲で、始符「博麗命名決闘法布告ノ儀」と対をなす曲。霊夢による重厚な布告ノ儀とはうってかわって、魔理沙が新たなる定めであるスペルカード決闘に興じながら、スペルカードへの想い、霊夢に対する想いがポップでロックな音楽に乗って感情豊かに歌い上げられています。百合じゃん。や、Wesさんが百合って言ってたけど決勝のこの曲に関しては正しいです。魔理沙が言ってる「お前」って全部霊夢のことです。
そしてやはり大サビ前のパートでは、魔理沙の実際のスペルカードと対応する歌詞があります。最高です。

楽曲紹介はここまで。次はナレーションについて語っていきます。ナレーションといえばWesさんの担当。Wesさんは3パターンのナレーションを作ってくださりました。まさか様々なパターンがあるなど思っていなかったので本当に感謝の限りです。
それぞれを概説すると、パターン1は「歴史の語り部」。パターン2は「森近霖之助」。パターン3は「舞台装置」です。2は東方の数少ない男キャラクターである森近霖之助の青年ボイスのイメージ。3は感情を排した、明確な人物像を感じない妖精的なイメージ。
このどれを用いるかというのはかなり悩みました。団体内で予選のことを「ジャンル歴史番組」とか「ヒストリア」とか呼んでいたのは馴染み深く、予選はパターン1が魅力的。しかし固い儀式的な側面の強い予選では、ナレーションに対して人物像を感じないパターン3も非常に魅力的。結果的にはパターン3でお願いしたのですが、パターン1だったとしても良い舞台が出来ていたと思います。一方、決勝はそこまで悩まず、パターン2の霖之助イメージボイスを採用。実はスターシーカーとスターゲイザーの続きの曲としてスターブレイカーという曲があるのですが、それは霖之助視点で魔理沙の成長する姿を描いた曲となっています。そのため、霖之助ボイスはイメージぴったりでした。

さてここからやっと本題の舞台解説に入っていきます。

予選

始め、舞台上には誰もいません。なぜならそこはまだ幻想郷ではないから。
スクリーンに映し出されるのは鳥居の映像。そして、ナレーションが流れます。

「忘れ去られた世界、幻想郷。ここは、その幻想郷に存在する、小さな神社である」

鳥居がどんどん近づいてきて、ついには鳥居の中をくぐるように映像が流れていきます。
この鳥居はもちろん、「現実世界」側の博麗神社の鳥居。この鳥居をくぐることで、博麗大結界を通り抜ける、イコール、現実世界から幻想郷にお客さんが入り込む、という演出です。
実際は博麗神社の鳥居をくぐっても博麗大結界を抜けるわけではありませんが、しかし結界の揺らぎによっては可能性があります。

で、この鳥居をくぐり抜けてから、始めて幻想郷に住むキャラクターが登場するわけです。ここでは私の演じる霊夢ですね。
霊夢は舞台上で神社奉納andお清めの儀を行います。まずは舞台上に上がって、舞台上手側に向かって一礼。本当は神社(スクリーンの画像)に向かって一礼したかったのですが、さすがに舞台に上がっていきなりお客さんに背を向けるのはどうかと思い、横向きに礼をしました。そしてさらに、次はお客さんに向かって改めて一礼します。
なお、この礼の角度はだいたい45度です。神様に対するお辞儀なので最高礼である90度の礼をしたかったのですが、可愛さとの兼ね合いで断念しました。

ナレーションが続きます。
「奉納の舞を執り行うのは、巫女、霊夢霊夢は強い霊能力を持ち、その力を持って、妖怪退治を生業としていた」
これで、誰がどこで何をしているのかという、最低限の舞台説明が完了します。そして霊能力や妖怪退治というワードから、それとなく東方の世界観をお客さんに示唆していきます。

一曲目、幻想萬歳楽。先ほど説明したように、能楽の正式な翁つき五番立で、「翁」に対応する楽曲です。能楽における役割と同様、あくまで儀式的な演目曲であり、これ自体がストーリーに関わることはありません。ストーリーはナレーションによって進行していきます。
ちなみにここで霊夢が踊っている神社奉納の舞ですが、これを純粋な神社奉納(神楽の舞)だと見なすと、お客さんに向かって踊るのではなく、スクリーンに写る神社に向かって踊るのが適切です。しかし、霊夢が持っている「お祓い棒」に注目。お祓い棒は神様への捧げものとしての意味がありますが、神様の依り代としての意味もあります。神様の依り代としてのお祓い棒は、皆さんご存知の通り、お清めに使うお祓い棒です。そしてお清めは当然、神様に向かってするのではなく人や場に対して行います。
つまり、霊夢が持っているお祓い棒は捧げものと神様の依り代のどちらの意味も持っており、この舞は神社奉納でありながら、スペルカードルール布告のための場を整える清めの儀式でもあるわけです。清めの儀式として考えれば、お客さんに向かっていることは不自然ではありません。
ちなみにもっと細かいことを言うならば、お祓い棒は本来巫女が持つものではありません。でも東方の霊夢は当たり前のようにお祓い棒を持ち、なんなら振り回しているくらいなのでそこは無視しました。
あと、ちょっと馴染みのありそうな点として、「参道の真ん中を歩いていけない」という神社のルール、知っている方も多いのではないでしょうか。神様の正面を「正中」と言い、基本的にそれを沿って歩くことは失礼になります。また、正中を跨ぐときも、一礼してから跨ぐのが理想です。舞台の霊夢は、一礼まではしていませんが、途中まで正中に立たないように演技をしています。まあ正直、霊夢はそんなの気にしない性格だと思うけどね。
で、幻想萬歳楽の終わりかけから霊夢は正中に立ちます。「ダメじゃん!」って思うかもですが、巫女さんには神降ろしというのがありまして。その身に神を宿す行為ですね。正中に立った霊夢は、つまり神降ろしが完了したことを暗示し、そしてスペルカードルールの布告が始まるわけです。

ナレーションの続き。
「人と妖怪の争いにより、やがて崩壊の危機に瀕した幻想郷。崩れかけた世界で、霊夢は妖怪からのとある提案を受け入れた。それは、人と妖怪との関係を大きく変える、新たなる定めであった」
ここらへんからスペルカードルールを布告する前説明が始まるわけです。
「新たなる定めを受け入れ、布告する。今日執り行われるのは、そのための神社奉納」
ここで霊夢の行なっている舞と、ナレーションのストーリーが一致します。そんな重要な部分ですが、実は伝達ミスでナレーションがここだけありません。文字でスクリーンに表示だけはしましたが、伝わったか不安なポイントだったりします。
で、幻想萬歳楽が終了。

「新たなる定めが、いま、告げられる」
このナレーションから間髪いれずに布告ノ儀が始まり、最初の歌詞である「告げる!!」が歌われます。
この、ナレーションの「告げられる」と、歌詞の「告げる」の呼応は、3月からずっとやりたいと思っていた演出の一つです。
そして布告ノ儀が始まった瞬間、柔らかい赤やオレンジに包まれていた舞台が青っぽく染まります。この色の演出は、実は舞台照明の色ではなく、プロジェクター映像自体にうっすらとつけた色によって引き起こされています。

そして古語によって述べられていく挨拶の言葉↓
ーー告げる
おおまえにこのなにおいて
ともどもきこしめさんと
よろづのひとにあやかしに
あまねくしろしめさんと
まぼろしのついえぬために
かくつくさしめたまへと
あらたなるさだめのために
かくかしこみもうすこと

歌詞はひらがなですが、字幕は漢字にしました。非常に悩みましたが、漢字の方が舞台として重厚な感じが出せるかなと。
あ、記憶で歌詞書いてるので若干違ったらごめんなさい。

ーー告げる
大前にこの名において
共々聞こしめさんと
万の人に妖に
遍く知らしめさんと
幻の潰えぬために
斯く尽くさしめ給へと
新たなる定めのために
斯く畏み申すこと

古語ですので、観客に意味を理解してもらうつもりはありませんでした。ただ、古語による楽曲の味、雰囲気を、ただそのまま感じて欲しかった。「たまへ、とか言ってる、ウケる!」みたいな感じに思っていただけていたら嬉しいです。
せっかくなので適当に意味も書いておきます。たぶん間違ってますが何となくこんな感じのはず、、↓
告げる
偉大なる博麗神の御前にて申し上げる
すべての人間と妖怪に広く知れわたれ
幻想郷が潰えぬために此れに従え
新しいルール公布のためかしこみ申し上げる

で、この挨拶パートが終わったら、曲のボリュームがちょっと下がり、ナレーションと映像によるスペルカードルール解説パートに入ります。
まず、舞台にやっと魔理沙が入場。そして霊夢魔理沙の端的な紹介フリップが映像に出てくるので、それに合わせてお客さんへ一礼。ほんとに、素晴らしく固い演技です。

「一つ、美しさと思念に勝るものはなし。人間も妖怪も、その力で相手をねじ伏せることなく。放つ攻撃の美しさで相手をねじ伏せる。誰も傷つくことなき決闘。それが、新たなる定めとなる決闘法、命名決闘法(スペルカードルール)」
ここのナレーションとか映像とかは、もう少し熟考したかったと思います。特に、力と美しさの対比を弾幕で表現するパートは、もう少しいい表現が出来なかったかな〜と思うことが。しかしこれを端的に伝えることは相当難しいので、結局最善は尽くせたのだろうとも思っています。

霊夢と、その友人である魔理沙は、いま、演武として、神に捧げる」
スクリーンに霊夢のスペルカードが6つ表示されます。綺麗ですよね。完成映像を見たとき、私が最も限界化したのはこの瞬間です。

「その、新たなる美しき決闘を」
倒置法です。こんなにエモい倒置法は無いと思いました。
このナレーションを皮切りに、ついに布告ノ儀の本パートが流れ出します。盛り上がる曲、溢れ出す弾幕映像。ここの映像音源は完璧だと思いました。

曲中のダンスは、魔理沙霊夢のスペルカードルールを用いた模擬決闘という設定です。そのため、霊夢魔理沙も曲中でいくつかの弾幕を放ちます。
そのため、プロジェクターと演者の立ち位置を合わせるのが大変でした。今年のダンスは難しい動きをしていませんが、立ち位置の微調整は本当に難しかったです。一応プロジェクター使って練習したりしていましたが、本番プロジェクターでやると練習とは細かい位置が違うという。苦労ポイントです。

なお、この曲の歌詞は全部文字起こししてお客さんに音読してもらいたいくらい舞台ストーリーと関わっています。舞台はこの曲を元に作られているので当たり前ですが。

強き敵。
あなたはどうして。
それを宣び。
それに思いを馳せるの。
その手に握るイデオロギー 意志を符名にして
→「美しさと思念に勝るものなし」。スペルカードにはそのキャラクターのアイデンティティ、思念が詰め込まれています。その意志を符名(スペカ名)にして所持するわけです。

転換する世界は
新たな規律を擁して
今 秩序無き 弾闘に 新たな美学を添えて
→変わりゆく世界に施行される新たなる定め、スペルカードルール。

風に袖を靡かせて 自由に空を翔る姿
空を埋め尽くす弾幕に 相対する昂揚は たとえる術などなく
→サビで霊夢の感情が初めて表出します。

戦うことなど目指さず 競うはただただ美しく
→予選舞台を一言で言うとこれです。

今 容赦無き 楽園に 素敵に慈悲無き力を
携えて 撃ち放つ それが博麗(わたし)という名のスペルカード
→「博麗(わたし)という名のスペルカード」……エモすぎる……舞台で使いたかった……。泣く泣くカットした部分です。

さあ来い その意味の全て この身にぶつけてみせるがいい
廻り廻る意味を見出した
この身に溢れる力の全てをこの手に掲げて
→さあお前の思念をこめた弾幕を私にぶつけてみせろと。私はそれを私の思念をもって受け止めてやると。そして始まるわけです。霊夢のスペルカードが!

――――
ずっと傍にあった 不思議な陰陽玉
→ スペルカード1枚目、宝具「陰陽鬼神玉」 。陰陽玉は、原作において霊夢の最初の武器です。舞台では、弾幕を背景にしながら、霊夢が二つの陰陽玉を両手で操作するような動きを見せます。このスペルカードは原作シューティングゲームではなく、格闘ゲームに登場するものです。したがって、弾幕映像は元ネタなど無い割とオリジナル。

――――
この針と供に 全ての敵を貫く
→スペルカード2枚目、「パスウェイジョンニードル」。針巫女ですね。東方知ってる人ならばわかると思いますが、これはもともとスペルカードではなく、本来ならば霊夢が自機のときの通常ショットです。しかし弾幕アマノジャクという番外編ゲームにて初めてスペルカード化されました。舞台における弾幕映像はそれが元ネタとなっています。カラフルな球が飛んでいく様は、霊夢のスペルカードの中では若干特殊かも? そして針の表現として、細長い弾幕が画面を駆け抜けます。

――――
この身より放つ 夢想の光は強く
→スペルカード3枚目、霊符「夢想封印」。東方永夜抄4面にて霊夢が放ってくるスペルカード、「夢想封印 散」が元ネタです。単純放射の弾幕なので舞台では埋もれがちだったかも?

――――
果て度無く広がる 陣をして捉えよう
→スペルカード4枚目、夢符「封魔陣」。そういえは夢想封印も封魔陣も、東方紅魔郷霊夢自機ボムがたぶん初出なので、もともとスペルカードじゃなかったですね。でも永夜抄でスペルカード化されたって言っても昔すぎるので……。さて封魔陣ですが、やはり東方永夜抄4面で霊夢が放ってくるスペルカードが元ネタ。舞台では霊夢が手を引くと同時に弾幕が追加展開され、星型の図形が現れます。単純だけど良い演出だと思います。

――――
二重なる結界 境界を消し去って
→スペルカード5枚目、夢符「二重結界」。これも永夜抄です。ただし舞台で用いた映像の元ネタは二重結界ではなく、「二重弾幕結界」というスペルカード。歌詞が示唆しているのは二重なる結界ということなので、たぶんどちらでも大丈夫だなと考え、私が好きな方のスペルカードを選びました。
ちなみにめちゃくちゃ映像に苦労したスペルカードです。語ると長くなります。

――――
この身の無名の力にも――――いつか。
→ 後の「夢想天生」。 このスペルカードは、今回の舞台において、かなーーり特殊な意味を持ちます。まず今回の舞台内容ですが、もちろんスペルカードルールを布告する儀式です。スペルカードが初めて用いられたのは東方紅魔郷なので、この舞台の時系列はそれより前となります。となると、「後の」夢想天生と書いたように、少なくともこの時点でこれは無名の奥義であり、スペルカードとしては存在しません。スクリーンにずっと表示されていたスペルカードの最後の一枚だけ、真っ暗で何も描かれていないことにお気づきだったでしょうか。で、この奥義は後に魔理沙によって名前を与えられ、スペルカード化します。それを暗示するため、このスペルカード映像中だけは魔理沙が介入し、お祓い棒を霊夢に渡す=スペルカードに名前を与えるという演出が行われています。そして弾幕映像では、特に何も意味のない、白く大量の弾が円形に広がっていきます。まだ不定形であることの表現です。

ーーーー

そしてスペルカードのパートが終わったら予選舞台は大大円へ。
久しぶりにナレーションが入ります。
「この決闘法は後に、弾幕ごっこと呼ばれた。それは、争いの災禍に代わって、幻想郷を照らす光となるのであった」
めでたしめでたしですね。ちなみに、ここで初めて「弾幕」という言葉が登場します。それによって、ああ今見せられたこれが弾幕なんだなと、無意識に理解していただくことが狙いです。私が原案で言った「東方を紹介する舞台」というのがここらへんで達成させているつもりです。

決勝

決勝は予選ほどの意味密度はないので安心(?)してください。
まず決勝はナレーションではなく歌で舞台が始まります。

Look at the sky...
What a starry night...
Uh...

この部分だけ、楽曲の速度を75%にしてしっとりと表現しています。舞台の導入なので、ゆっくりめに。
魔理沙の立ち位置は舞台後方の真ん中。ぴったりスクリーンの中心に収まる位置です。この立ち位置を利用して、演者に向けて漫画の吹き出しのようにして歌詞を表示していきます。歌詞と魔理沙のセリフは同じなんだとと理解してもらうためです。

そしてナレーション。
「これは、少し昔のお話。大空に、星空に、そしていつか見た、空をかける巫女の姿に。少女は強い憧れを抱いていた」
昔、というのは予選演技の時間軸に対しての昔です。

一曲目、スターシーカー 。
幼少期、実家住み時代の魔理沙が空への憧れ、舞台としてはそんな空を飛ぶ巫女への憧れも謳った曲。
本当は、実家時代の魔理沙の専用服(和服)を用意したかったのですが、どう頑張っても舞台として成り立たないため断念しました。
舞台ではやはり、吹き出しを用いてセリフ兼歌詞を表示していきます。しかし魔理沙も結構大きく舞台を動き回るので、セリフ表示と魔理沙の位置関係はとても繊細です。計算され尽くしたその動きをご覧ください(もう終わっちゃったけど)。

吹き出し以外の映像は、決勝担当の相方からの要望も取り入れて作ってみました。かなり良い演出に仕上がったんじゃないかなと。

ナレーション。
「魔法使いになる、少女はそう決心した。満点の星空を自由に飛び回り、あの空飛ぶ巫女の姿に自らが並び立つため」
魔理沙は実家を飛び出し、家族と決別し、一人で魔法使いを目指すわけです。
ちなみに、「魔理沙」なんて名前、商家の親が自分の娘につけるでしょうか? 「魔」、ですよ。これは原作設定としては何も言及されていませんが、魔法使いになると決心し、家を飛び出した魔理沙が自分で名前をつけた説があります。もともとの名前は「霧雨理沙」である……かも??

二曲目、スターゲイザー

企画さん「セカオワですか!!」
私「あ、違います」
申し訳ねえ。

ナレーション。
「……しかし、それは苦悩の始まりであった」

この曲すごい曲でして、魔法使いに憧れつつも、その道の果てしなさに絶望する魔理沙の複雑な感情がありありと表現されています。東方には魔理沙いぢめという文化がありますが、作者様は魔理沙いぢめのスペシャリストですね。

舞台では霊夢が登場。しかし霊夢魔理沙のことなど眼中にありません。ただの人間なので別段興味がないのです。
魔理沙は憧れの霊夢に対して手を伸ばしますが、霊夢は意に介せずそれをひらりとかわしてすれ違います。
この曲中はもはやダンスではありません。ひたすら感情のままを表現する魔理沙と、特に気にせず日常を過ごす霊夢。そんな対比表現をひたすら行なっています。
原作魔理沙の性格を考えるならば、魔理沙は自分の苦労や努力をひた隠しにするタイプなので、負の感情むきだしの魔理沙は東方民にとっては新鮮だったのではないでしょうか。魔理沙いぢめが捗りますね。

しかし曲中、魔理沙は覚悟を決めます。
歌詞です↓

星が高い。星が遠い。
あの全ての中の一つに
あなたもいるのだろうか
ならばと睨みつけるのは
スターゲイザー(星を見る人)たる私
どれほど俯いたとしても
捨てられないんだー!

魔法使いになるため、霊夢に並び立つため、決して諦めない。その強い思いを感じ取り、霊夢はやっと魔理沙を目に留めます。
そしてサビ↓

ずっと遠い道でも ずっと高い道でも
足を止めることだけは決して出来ない
そう諦めたなら 背を向けた全てに
いつか胸を張ることも出来なくなるから

霊夢は試すように魔理沙をあしらいますが、魔理沙は諦めずに進み続けます。そしてその末、魔理沙がついに魔法使いとなった時。霊夢魔理沙を認めて並び立つのです。
めでたしめでたし……

ここらへん、まじでわたしが書いた同人誌と言っても過言ではありません。だって絶対こんな展開、原作ではありえないじゃん……
ちなみに私は、魔理沙は魔法使いになれるまで霊夢の前には現れなかったと思います。あの魔理沙霊夢に対して弱みを見せるわけない、って考えです。
まってこれミスコンと関係ないわ。話戻さなきゃ、、

ナレーション。
「諦めない、ただその決意の末、少女はついに空を翔け上がった」

三曲目、無題「空飛ぶ巫女と普通の魔法使いのいつもの毎日」

ついに霊夢と並び立った魔理沙が、日常として霊夢弾幕ごっこを繰り広げます。
霊夢にとっては、スペルカードルールを制定したことによって勝ち取った日常。魔理沙にとっては、魔法使いになったことで勝ち取った日常。予選と決勝、まったく異なる思いを抱いていたはずの二人の主人公が、全く異なるそれぞれのアプローチの結果、全く同じ日常を勝ち得るのです。神がかった舞台構成ですね(自画自賛)。

1,2,3,4,5,6 の掛け声に合わせて、スクリーンに魔理沙のスペルカード6つが順番に表示されていきます。この演出も、3月くらいの時点でずっとやりたいと思っていた演出です。

そしてやはり、歌詞を起こして音読してほしいくらい素晴らしいです↓

いつも考える
遊ぶ その意味を
どうしてその手を高く伸ばすのか
けれどそこには意味など
けしてないのかも
相手に押し付ける“符”なんて
→予選の歌い出し、霊夢の想いと対応する魔理沙の想いです。霊夢と違って魔理沙は、相手に自分のスペルカード(思念)をたたきつけることに、そこまで意味はないのかも、と思っています。

この手には何もかも無くて
だけどやめる事は出来なくて
だってこんなに楽しいことに
手を染めないのはどうなのかと
→予選では重厚な世界観で説明されたスペルカードルールですが、魔理沙はただ楽しい遊びであると感じています。

独り善がりでもいいんだ
そう教えてくれたのは
なあお前は 気付いているのか
お前 笑っているんだぜ
→しかし、魔理沙は気がついています。霊夢自身も、幻想郷を守る役目とか以前に、スペルカードルールを楽しんでいることに。

そうだ 空へと高く
その姿に並ぶよう
同じ空を切り取る影となる
→ついに並び立った二人の姿、ですね。

私が思う一つ一つの“意味”
お前にただ叩きつけたいんだ
→今度は魔理沙がスペルカードを霊夢へと叩きつけます。ただ、それが楽しいから。

さあ 新たなる“ルール”の下で!
→舞台ではここでちょっと霊夢が中心に立つのがエモいポイントです。予選で布告した新たなるルール、もちろんスペルカードルールのことです。

あとはもう私が語るまでもないので歌詞だけ載っけるオタクになります。。↓

勝つとか負けるとか
そういうんじゃないんだ
気持ちよければそれで全ていいんだ

それにただただお前と
同じ空を飛翔ぶ
それだけでどこか楽しい気がするから

これが少女達の遊びなら
命短し遊べよ乙女
恋にかまけてさえもいられない
そういうのは符の中で

今日という一日には
名前なんて無いけど

なあお前も わかってるんだろう
今日も 楽しそうなんだぜ

だから 空へと高く
その姿に並ぶよう
同じ息吹を感じる風となる

不思議で素敵なこの楽園の空に
二人だけの世界を作るように

さあ 掲げようこの全てを!

いつか全て終わるとして
それでも明日はきっと来るはずだから

だから 空へと高く
その姿に並ぶよう
お前の前でずっと笑っていよう

私の“符名”はまだ“不明”から
今は全てを楽しんでいたい

さあ この空に向かって
思いをこめて、掲げよう、この全てを!


ふぅ……(自己満足)
で、舞台のラスト。やっぱり始まるわけです。魔理沙のスペルカードが!

魔理沙のスペルカードは全てが永夜抄が元ネタの弾幕です。

ーーーー
ミルキーウェイ
広がれ! かつて見た天の川のように――
→ 魔符「ミルキーウェイ」。天の川がモチーフとなっているスペルカードです。星空に憧れた魔理沙の思念がまさに詰まっています。原作弾幕ではカラフルな弾幕ですが、より天の川っぽくするために色を青系に統一しました。あと、天の川っぽく弾幕を広げるようにプログラムするのが大変でした。

ーーーー
スターダスト!
散らばれ! 甘い幻想は星屑のごとく――
→ 魔符「スターダストレヴァリエ」。 星屑ですね。原作では小さな星弾が非常に面白い軌道を描く楽しい弾幕です。舞台で見せられるのは一瞬の時間なので、私が綺麗だと思った1つのパターンの動きだけを作って見せました。

ーーーー
ノンディレクショナル!
追い詰めろ! 私の魔法に死角などない――
→ 恋符「ノンディレクショナルレーザー」。明言はされていませんが、実は東方紅魔郷に登場するキャラクターであるパチュリー・ノーレッジが放つ弾幕魔理沙が盗んだ(?)もの。しかし本当に綺麗な弾幕で、今回制作した魔理沙弾幕の中では一番のお気に入りです。再現弾幕なので私が考えたわけじゃありませんが!

ーーーー
マスタースパーク!
弾けろ! 全力全開全て全壊――
→ 恋符「マスタースパーク」。お馴染みのマスパです。舞台では当然、マスパを放つジェスチャー魔理沙がするのですが、それが完璧です。おかげで良い演出になりました。

ーーーー
アースライトレイ!
輝け! 天を照らす地上の星――
→ 光符「アースライトレイ」。これは再現度の高いものが出来たのですが、舞台映えしにくい弾幕だったので色々と追加しました。それによって再現度が下がってしまったのですが仕方なしです。

ーーーー
ブレイジングスター!
飛ぶんだ! 最速の流れ星となって――
→ 「ブレイジングスター」。 マスパと並ぶ、魔理沙の象徴的なド派手弾幕です。これは偶然なのですが、良い感じに予選の夢想天生と対になるように、物量で画面を埋め尽くす弾幕になりました。

ーーーー

そして舞台は終了へと向かいます。
二人の日常に、もはやナレーションなど要りません。タガが外れたように、思い思いに舞台を動き回る二人。そして、最後は舞台の中心で、二人の弾が混じった花火のような弾幕によって、幕が降ります。


これで、2019年度ミスコン、博麗神社萬歳楽の舞台解説記事は終了です。
相変わらず自分語り1000%の記事で申し訳ありません。ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます。

次は当日の話や他団体についてなど、やっとミスコン記事っぽいことを書けると思います。

ミスコンについて_1.自分語り編

2019年度、博麗神社萬歳楽という団体名で2人でuecミスコンに参加させていただき、博麗霊夢を演じさせていただいたみぎきと申します。
あまり文章が得意ではありませんので読みにくいのはご勘弁くださいm(_ _)m

何から話せばいいのかわからん……

とりあえず自分の話からします。
2018年で優勝しまして。そもそも2019年は出場するの?って話になったわけです。
でも、出場すること自体にそこまで迷いはなかったと思います。uecミスコンほど自分の感情を揺さぶるものは人生で無いし、出なかったら観客席で後悔をするのがわかりきっていたので。
自分語りですが私は高校生活の軽音部でもかなり充実した活動をしてまして、5バンド掛け持ちしたり部長やったり、それ自体がどうってわけではないですがとにかく本気で打ち込んでいました。でもそれ以上にuecミスコンは本気になれるコンテンツでして、それって凄いことだと思います。幸福なことです。
話は戻って、出場する理由ですが、先ほど書いた理由の他にも「まだやりたいことがあったから」というのが大きいです。それはボカロとか東方とかいう話ではなく、舞台演出の話です。私たちは去年、映像を用いてミュージカルをミスコンで成立させましたが、正直あの映像はそれぞれ一晩で作ったくらいのものです。映像を使うという観点において全く私の底を見せられていませんでした。その底まで全て出し切りたい。そんな強い思いがありました。加えて、ミスコンのある意味上等手段ですが、「持ち物」を使って演技をしたいという、これまた強い思いというか憧れがありました。

ただそこらへんは私個人としての理由です。私たちは2人組のミスコン団体としてずっと演技してきました。私がやりたいから、という理由のみで演技を全て決めてしまうことはできません。
例えば去年は、ボーカロイドの「鉛姫シリーズ」という、お互いが大好きなコンテンツを用いることで団体としての思いを一つにして演技をしました。もしも私が相方のどちらか片方が好きなコンテンツを用いていたら、演技する上で様々な齟齬を感じてしまったと思います。
このようなことに悩むのはウチの団体特有ではないかと思います。普通、と言っていいかはわかりませんが、やりたい演出やコンテンツがあるならば、同じ想いを持つ同士を募って団体を作るのが自然ではないでしょうか。もちろん同じ想いを持つ人はそう簡単に見つからないので、思い切ってソロ参戦する、というのも近年では珍しくありません。
しかし、だからこそウチの団体はこの2人でやらなければならない、という思いがありました。過去3年間の共演経験は軽くありません。お互い何が出来るか、何をしてきたか、どういう苦悩をしてきたか。それによる2人の舞台感覚の整合性はチートです。ずるい。

そういうわけで今年も、去年の鉛姫シリーズのような、お互いの想いを一致させるためのジャンル選びが始まりました。しかし当然ながら、そんなもの滅多にありません。「今年何も決まってませーん」みたいな状態が少し長く続きました。
そんな中、一つの転換期は3月。去年の鉛姫シリーズの話がありましたが、実はその作者さんが東方アレンジをしている時期があったんですよね。相方は鉛姫シリーズだけではなくそれらの楽曲も聴き込んでいたと。かたや私は、バリバリの東方好きです。ならばそこらへんをなんやかんやして、「東方Project」でいっこ舞台が出来るんじゃないかなと。
東方なんて大きなコンテンツ、なんで思いつかなかったんだって話ですが、東方ってボカロに比べて踊ってみた動画が乏しいんですよね…… ボカロは動画サイトに楽曲を上げるのがメジャーですが、東方は同人即売会でアレンジCDを出すにとどまることが多いイメージがあります。なので同じく動画サイトに投稿するのがメインの踊ってみた界隈は、ボカロに親和性が高くて東方とは親和性低いんじゃないかなって思います。なので、実は2016年から東方やりたいって思っていたのですが、東方はダンスが少ないから出来ないって先入観がありました。しかしです。よく考えたら私たちは去年、オリジナル振り付けに挑戦して舞台を作ったんですよね。ならば東方だろうと、かなり自由な舞台に挑戦できるなと……この時まで気がつきませんでした。盲点。
あ、ちなみにダンスが無いとミスコン舞台出来ないっていうのは私たちがダンスやりたいからってだけです。こだわりポイントです。

さて、東方やるって決まった瞬間、わたしの中でほぼ演技イメージが決まってしまいました。東方厨特有の暴走ですね。
だって全部出来るんですよ私のやりたいこと。弾幕っていう映像表現と、お祓い棒っていう手持ち道具による舞台。ついでに弾幕表現するのにうってつけの楽曲も心当たりがありました。何より、東方Projectにはあらゆるコンテンツの中で最推しの音楽サークルがある。先ほど言った楽曲もそのサークルさんの楽曲です。

そのサークルさんの紹介をします。凋叶棕(読み方はティアオイエツォン(中国語で枯葉色って意味だった……はず…(東方の原曲にティアオイエツォンって曲があったりもします)))ってサークルさんで、東方同人ではけっこう有名なサークルさん。最近では、AZKiさんの楽曲「without U」を手がけたのがこのサークルの中の人であるRD-soundsさんだったりします(AZKiさんには詳しくないので間違ってたら勘弁)。東方アレンジでは非常に濃密、重厚、軽快、時に扇情的だったり暴力的だったり、とにかく世界観の深みに私は魅力を感じております。東方アレンジCDに漢字一文字でテーマを付けるのも特徴でして、各楽曲それぞれ自体だけではなく、CD全体として一つの作品に仕上げる手腕はあっぱれです。あっぱれ!!(一般観客並感
私は凋叶棕さんの東方アレンジCDを全て揃える程度のファンです。いまは全部で……ちょうど30枚かな?

まあしかしウチらはソロ団体じゃないので、私の演技イメージを団体に押し付けるわけにはいきません。とりあえず凋叶棕さんの楽曲で私が舞台で使いたいと思った曲を相方にも聞いてもらいました。そして私も、相方が聴いていた東方アレンジ楽曲を聴きこみます。その上でまず私が舞台脚本を作り、相方に聞いてもらいます。その上で相方にも舞台脚本を作ってもらい、私がそれを見る。そんな繰り返しの作業がありました。

一番最初、私が考えた脚本のようなものを口頭で相方に伝えたときは、良くも悪くも「今年まじで苦しい一年になるな」とお互い感じたのではないでしょうか。というのも、東方に対する考え方や知識がお互いで違いすぎる。東方というのは、東方という言葉だけで一致団結出来るほど浅い世界ではないということを強く実感しました。そういう意味では、去年やったようなコンテンツによる団体意識の統制には失敗したかもしれません。

ちなみに私が相方に伝えたのは、「東方を紹介する舞台を作りたい」というような内容だったと思います。
東方は弾幕シューティングゲームなのですが、その弾幕がパッケージ化されているのが大きな特徴です。分かりにくい言い方ですね。一番単純な言い方をすると、東方の弾幕って個数が数えられるんですよ。このステージのボスのこのキャラクターは弾幕を6つ持ってて、1つ目の名前がこれ、2つ目の名前がこれ……みたいな。ほかの弾幕シューティングゲームは、色々な弾幕を放って来ますが、ステージ中の何秒地点から何秒地点までの弾幕……みたいな言い方をします。ボスの第何形態の弾幕、のような言い方は出来るかもですが、弾幕に名前をつけて離散化しているのは東方だけじゃないでしょうか。
そんな弾幕の離散化、をするために、東方には「スペルカードルール」という設定が存在します。弾幕に一貫的な意味を持たせ、名前をつけたものを一枚のカードとして扱いましょう。そしてそのカードをお互い規定枚数使い、すべて突破した方を勝者としましょう。そんな感じのルールです。このルールに従っているため、東方の世界である幻想郷ではどのキャラクターも「スペルカード」という離散化された弾幕を放ってくるわけです。
そんな「スペルカードルール」ですが、もちろんゲームの都合としてだけでなく、ちゃんと幻想郷の世界観に合致した設定が存在します。幻想郷は博麗大結界という結界で隔離されたいわゆる異世界なのですが、そこには妖怪や神霊、妖精などの幻想的な存在が数多く住み着いています。もちろん人間もです。そんな世界で、片や妖怪は人間を食い、片や人間は妖怪を退治する、みたいなパワーバランスが成り立っています。しかし妖怪が人間を食ってしまうと、隔離された小さな世界である幻想郷ではどんどん人間が減ってしまいます。それによるパワーバランスの崩壊を恐れた妖怪たちが提案したのが、「スペルカードルール」です。つまりは命のやり取りをせず、弾幕という競技で人間と妖怪の争いを完結させましょうってお話。

あ、もしも東方原作設定ガチ勢の方がこの文章を読んでたら、細かい間違いなど有ると思いますが、スルーしていただけると……(懇願

こんな感じで、東方に存在する「スペルカードルール」を紹介し、同時に東方の世界観を紹介する。そういった舞台を作ろうっていうのが私の原案であります。
何故こんな原案になったかというと、やはり凋叶棕さんの楽曲が大きな一因です。「霊夢が幻想郷にスペルカードルールを布告する」という内容の、緊張感と重厚感マシマシの曲があるんですよね。その楽曲をそのまま用いて舞台を作り、ラストはスペルカードをプロジェクター映像で再現して終わり!という舞台イメージでした。

でもこんなの伝わるわけがない。ざっくり説明しても上記くらいの長文になるのに、考えがまとまりきっていない状態で、実際はこれ以上の情報量を、口頭で相方に伝えたわけです。「は?」って感じだったのではないでしょうか。
なにせ、これらの話は東方の裏設定と言ってもいい、知らなくても全く問題ない知識です。私としては長年のファン活動で積み重ねた知識ですが、それを小一時間で全て説明してもピンと来るはずありません。なんなら私は説明下手なので、支離滅裂な言葉を発していたことでしょう。
あとは伝わるかどうか以前に単純な問題点も多量ありまして。この物量を舞台で5,6分でやるの???とか、これを観客に説明して伝わるの???とか、あとは相方が好きな東方アレンジ楽曲を使う場面や時間はあるの???とか。まさに前途多難。

そこで一旦私の原案脚本は忘れて、相方にも脚本を作ってもらいます。そちらの内容は、分かりやすいストーリー仕立ての妖怪退治。弾幕映像表現を用いたバトルの舞台って感じだったと思います。
この脚本は、最終的に使うことは無かったとはいえ、お互いの東方という演技内容に対するイメージの違いを明確化してくれました。私は重厚な世界観を再現し、歴史的事実を述べていくような緊張感のある舞台。相方は原作ゲームに近い、物語に沿った弾幕バトルの舞台、という感じに。

この時点で、今年度は「東方舞台というイメージを2人で一致させる」ということが最初で最大の課題であると認識しました。
そこからは一つ一つ、丁寧かはわかりませんが原作設定や凋叶棕さんについての知識を私が語って共有していきます。まあ知識自体の共有はそこまで難しくありません。しかし、私が抱いている「これは物凄い舞台になる!」という感情まで共有出来るかというと不可能でした。神社の儀式をモチーフにした舞台の緊張感や、弾幕映像による綺麗な舞台演出は、今年の演技を見てくださった方はピンと来るかもしれませんが、この時点では私の頭の中にしかありません。先に映像を作ってしまえばイメージの伝達は容易だったかもしれませんが、この演技内容でミスコンをやるという合意があったわけでもないのに映像に着手するわけにはいきません。
なお、ここらへんから完全に私主導で舞台を作ってしまっていたのは申し訳ポイントです。ごめんなさい、、

そんなやり取りが長く続いていった結果、私の頭の中を可能な限り全て出し切った一つの脚本が完成しました。舞台でやりたいことの細やかな解説と、それに対応する東方原作設定の説明。それらを一つにまとめた、長ったらしい脚本です。
それを相方に見てもらったとき、私の舞台イメージの一端を、やっと共有することができました。これが5月の下旬の話です。あと、あまりにも高密度な脚本だったために、相方が好きな楽曲の入る余地が無くなったのは申し訳ポイント2です。たくさんあります。ごめんなさい、、

さて、やっと本当の原案と言える脚本が完成し、この方向性で舞台を作ろうというのが確定したわけですが。問題点だらけなのは変わりありません。
まず一番の問題は時間です。予選だけで最低でも10分は欲しいなって感じでした。凋叶棕さんの楽曲って基本的に6分以上あるのに、それを3曲予選でやろうって話だったので当たり前です。これはもう音源編集を頑張る以外にありません。楽曲を切って貼って切って貼って、涙を飲んで一曲ボツにして、それでもまだ切って貼って、5秒縮めるのに数時間かけたりとかしました。でもそのおかげで、しっかり完成するわけです。予選6分、決勝8分の音源が……!!!
……
はい、その後、演技時間は予選5分、決勝6分だと言われて阿鼻叫喚となります。結局決勝は8分に変更されましたが、予選は血を吐きながら1分削りました。
ちなみに今年は数秒のオーバーはOKだったみたいです。5秒縮めるのに数時間かけた私の努力はいったい。。

さてこれで、時間の問題は一応解決しました。でもそれは、やりたい楽曲が演技時間内に収まっただけに過ぎず、まだまだ問題は山積みです。
次にやったのは、東方原作設定の複雑な世界観を観客に伝えるためのナレーション作成。ゆっくりボイスで音源に重ねて仮ナレーションを付けていきます。
その結果できたのが、これ↓

「ここは幻想郷。人と、人でないもの。神、妖精、幽霊、そして妖怪が蔓延る小さな世界。そんな小さな幻想郷は、度重なる妖怪の決闘によって崩壊の危機に瀕していた。
人と妖怪、その相容れないはずの存在を同時に救うべく、幻想郷の制定者たる巫女、博麗霊夢は、誰も傷つくことなく決闘をするルールを制定する
一つ、妖怪が争っても誰も傷つけぬこと
一つ、人間と妖怪が対等に決闘できること
一つ、実力主義を否定すること
一つ、美しさと思念に勝る物は無し
霊夢はこれらの理念を……
弾幕」に託した
新たなるルールが、いま、告げられる——!
(曲)
手に握られた一片のカード。
そこに記された弾幕の技が自らの手札である。
相手が持つ手札、つまりは弾幕に当たってしまったら負け。全てを突破したら勝利となる。
互いを殺すことなく美しく行われる決闘。
それが、新たなる定め。
スペルカードルールである。」

これ舞台で垂れ流すの?
難解すぎてファイナルファンタジーのオープニングみたい、と言われた伝説のナレーションです。
何が問題かというと、まずは密度。文字で書くとわかりにくいですが、舞台ナレーションとしてこれらをどんどんと流すと、次から次へと新しい情報が出てきて訳が分からなくなります。スペルカードルールの解説文としては良いかもしれませんが、解説文を舞台上で音声で流したところで、お客さんの心は離れていくと思われます。
あと、演技とナレーションのちぐはぐさ。ナレーション中、神社奉納的な舞を霊夢が踊るのですが、ナレーションは解説文なのに、解説文と全く関係ない演技を霊夢はしているわけです。熱心にナレーションを聞いたところで、じゃあ舞台上に居るのは誰?? 何を何のためにしてるの?? と。謎しか存在しない舞台となります。
さらには、弾幕って何だ? という問題。このナレーションで弾幕決闘の説明をして、ナレーションが終わったら弾幕を映像で表現するわけですが、弾幕を知らない人からしたら「なにこれ?」となるわけです。わたし達はシューティングゲームにおける弾幕を知っているので、映像に弾幕を写して、その中をぬって飛び交う様を演者が表現してるんだな〜と理解できますが、弾幕を知らなければそもそもこれが「攻撃」であることも知らないわけです。決闘の話をしていたのに、なんか知らんけど綺麗な幾何学模様を背景に踊ってるなーと。

これらは本当に本当にやっかいな問題でした。悩みに悩んで悩み抜いた結果、ある一つのことに気がつきます。この演技脚本には、世界観としての東方と、ゲームとしての東方が混在している、と。
どういうことかというと、ナレーションでは世界設定としてのスペルカードルールを説明しているのに、その後の映像表現では突然ゲーム画面のような映像が出てくるわけです。これを成り立たせたいなら、世界設定としてのスペルカード説明が終わった後に、「ちなみにこれは原作がシューティングゲームでして、非常に小さな当たり判定の自機で画面を埋め尽くす弾を避ける弾幕ゲームというジャンルで、これから流す映像は自機がいないけど、一応舞台上の演者が自機という設定で、弾幕を避けることをダンスで表現します!」みたいな台無しな説明が必要になります。

そんなわけで私が行ったのは、舞台からあえて「シューティングゲーム」要素を排除すること。シューティングゲームというものを知らなくとも理解のできる舞台にフォルムチェンジする作業です。
まず、スペルカードルールの理念は四つありましたが、あえてそのうちの一つ、「美しさと理念に勝るものはなし」のみを採用します。それによって、「命のやり取りをせずに美しさで競うようになったんだよー」という至極わかりやすい展開になります。加えて、よくわからん綺麗な弾幕を見せても、「なるほど、美しさで競うから綺麗なんだな!」と、爆速理解してくれるはずです。弾幕ゲームという背景を一切廃した結果、東方を知らなくても弾幕映像表現が楽しめるわけです。天才か。
そしてもちろん、「全てのスペルカードを突破したら勝ち〜」みたいな部分も廃しました。これもゲーム的都合の部分なので。
さらに霊夢魔理沙のようなキャラクターにもちゃんと焦点を当てます。天皇陛下憲法を発表する儀式(適当)みたいなイメージで、神社のお清めによって場を整え、スペルカードルールという新たな憲法を公布する、みたいな。そんな方向性で舞台を再構成していきます。魔理沙は予選では完全お手伝いモブでしたが。
さらに細かい言い回しを色々と簡略化していった結果、ナレーションはここまで進化します↓

〜忘れ去られた世界、幻想郷。ここは、その幻想郷に存在する、小さな神社である〜
〜奉納の舞を執り行うは神社の巫女、霊夢霊夢は強い霊能力を持ち、その力を以て妖怪退治をし、是を生業としていた〜
〜妖怪との諍いにより、やがて崩壊の危機に瀕した幻想郷。崩れかけた世界で、霊夢は、妖怪からのとある提案を受け入れた〜
〜それは、人間と妖怪との関係を大きく変える、新たなる掟(おきて)であった〜
〜この世界に新たなルールを受け入れ、施工する。今日(こんにち)、執り行われるは、そのための神社奉納〜
〜新たなる定めが、いま、告げられる〜
(曲)
〜ひとつ、美しさと思念に勝るものは無し〜
〜人間も妖怪も、その力で相手をねじ伏せることなく、放つ攻撃の美しさで相手をねじ伏せる〜
〜誰も傷つくことなき決闘。それが新たな定めとなる決闘法、スペルカードルール〜
霊夢と、その友人の魔法使い、魔理沙は、いま、演舞として、神に捧げる。その新たなる美しき決闘を〜
(曲)
〜こうして幻想郷は決闘の災禍ではなく、美しい弾幕が飛び交うようになった〜

物量自体はやはり多いですが、非常に洗練されたナレーションになりました。本当に、ここまで極まったナレーションが完成したのは相方のおかげです。私は文章を書くのが下手なので。
ちなみにこれが完成したのは10月に入ってからです。時間が飛んだな? 同人イベントで個人誌出したりとか旅行行ったりとかしたのも原因ですが、時間をかけて苦労したのも事実です。

なお、ここまで全て予選の話。
決勝はまた別の問題が存在します。

神社の儀式や憲法公布で例えたように、予選はわりとお固い舞台ですが、一方で決勝は魔理沙個人の感情に焦点を当てた、わりと去年に近い感じのミュージカルっぽい演技です。
決勝での苦労点を説明する前に、今年の裏テーマというか、隠れた挑戦について説明しないといけません。実は今年、キャラクターに対応するセリフを一切使いませんでした。全てがナレーションと楽曲で構成されています。
キャラクターの声、というのはミスコンでは採点項目にはなりにくいです。なぜなら、女っぽい声に加点するならば、知り合いの女子にセリフを頼むのが最強だからです。もちろんマイクを通して舞台上の演者が女声を発したら加点ですけどね。しかし何となく、声というのはステージの印象に大きく響きます。
そんな矛盾への一つの投げかけとして、今回はそもそもセリフを使わないという挑戦を行いました。いかがでしたでしょうか。

さてそんなセリフの代わりとなるのが「歌詞」です。実は予選の歌はすべて霊夢のセリフ、決勝の歌はすべて魔理沙のセリフ、になっています。で、予選はまあ霊夢のセリフだと思ってもらえなくても舞台が成立するのですが、決勝は予選と違って魔理沙1人に強く焦点を当てた演技なので、セリフと歌詞が同一であるとお客さんにも理解していただく必要がありました。
まあこれは単純な解決策を用いまして。漫画のような「ふきだし」を画面に表示して、それに沿って演者が動くことで歌詞とセリフの一致を示唆しました。そして徐々にふきだしを減らしていき、何となく歌詞はセリフなんだなーという刷り込みをお客さんに対して行ったつもりです。

次に、決勝は魔理沙個人のストーリーなのですが、大まかに言うと「空を飛ぶ霊夢に憧れた魔理沙が魔法使いを目指して、苦悩の末に夢が叶い、一緒に空を飛ぶ!」という感じです。簡単に思えますが、でもこれ、魔理沙の主観的な話だから、ナレーションでなにもかも説明しちゃうと変なんですよね。しかし歌詞で説明するのは限界があり、どうしようかというともうダンスで表現するしかありません。
決勝二曲目。ほぼ感情のみで表現した特異なダンスだったと思います。ストーリーが伝わったでしょうか?

さあこれでナレーションも決まり、予選と決勝の演技内容がだいたい決まりましたと!
苦労したナレーションは、我が団体の3人目のメンバー、Wesさんに読み上げを託しました。Wesさんは2016年度にもナレーションを担当していただいたのですが、私達の2016年度演技は立派すぎる黒歴史でして、それに付き合わせてしまったWesさんにはずっと申し訳ない思いがありました。そんなWesさんにお詫びとお礼をする気持ちで、Wesさんのナレーションで改めて質の高い演技を披露しようと。そういう思いでした。
もちろん、お詫びやお礼の気持ちがなくてもWesさんに頼んでいたと思います。それくらい素晴らしいお声の持ち主です。

で、Wesさんに、ナレーションのゆっくり音声が入った音源動画を提出しました。そしてしばらくしてWesさんから仮録音ナレーションファイルを提出していただいたのですが、そのファイルを開いて目を疑いました。
なんとWesさんなりに音源動画を深く研究して舞台解釈を持っていただいたみたいで、ここはこれで大丈夫かどうか、これで合ってるかどうか、改善点はないか、みたいなことが書かれていたのですが、その舞台解釈がドンピシャ。ここまでのこの記事に書いたほぼ全てのことを音源とナレーションのみから考察されてしまっていました。脚本すらお渡ししていなかったのに、です。
しかもその舞台解釈により、さまざまなパターンのナレーションを作っていただけたのですが、もう、どれもこれも良すぎて選べないレベルです。こんなに質の高い仕事をしてくださったんだから、自分たちも頑張らなければと。ものすごい励ましとなりました。本当にありがとうございます。

でもって、お次は衣装の話。この舞台内容を鑑みるに、生半可な衣装ではダメだという思いがずっとありました。東方はシューティングゲームであり、登場キャラクターは当然、アイドル衣装を着ているわけではありません。あくまで普段着であり、となると舞台としては地味なわけです。
しかしこれも団体内で舞台イメージがなかなか共有出来なかった弊害により、その感覚共有が出来ていませんでした。私が「東方はメジャーだからいくらでも(クオリティの高い)衣装は(きっと)ある」みたいなことを言ったために、「東方は衣装が充実してるから購入を焦る必要はない」のような誤解を与えてしまいました。申し訳ポイント3です。その結果、衣装選びは納期の関係もあって結構ギリギリのムーブをすることになりました。
さて、霊夢の衣装についてちょっと詳しく話そうと思います。霊夢の衣装は、最初はあの衣装ではなく、もうちょっと原作の霊夢に近い、上下赤色のものを用いる予定でした。ただしその衣装はクオリティは高いのですが、フリルマシマシであり、ちょっとそれは舞台イメージと違うかなとも思っていました。そんな中、東方やその他の高クオリティな衣装を受注製作で作り、ヤフオクを通じて売買しているstar_wxvさんという方を見つけました(実はもともと用いる予定だったフリル霊夢衣装もこの方が製作者だったのですがその話は割愛)。
コスプレ衣装というのは、同業者ならばわかると思いますが、ネットで購入する場合は一か八かです。個人製作とか業者とか関係なく、写真と全然違うものを送ってきたり。サイズが違ったり、ひどい時はお金だけ盗られて何も送られてこなかったり。そんな中、ヤフオクでコスプレ衣装を製作、出品しているこのstar_wxvさんは、出品者評価が非常に高く、しかもコメントを見る感じ、不正して稼いだ高評価でもありませんでした。そんな人が出品している、あの霊夢の衣装を見つけたとき、もはや運命を感じました。私の舞台には、絶対にこの衣装が必要だと。
しかしなんと、製作に6週間かかり、さらには台湾在住ということで、発送してから届くまでにも1週間弱かかると。ミスコンに間に合わない計算でした。それでもこの衣装に惚れ込んだ私は、すぐにstar_wxvさんにメールで事情を連絡し、なんとか作ってくれないかとお願いしました。出品者コメントにあった通り、すぐに丁寧な返信が返ってきまして、曰く、特急対応にするので残業代を払ってくだされば製作可能だと。即決です。即決で残業代を払いました。
そしてヤフオクとのやりとりでは、細やかな製作過程まで報告していただきまして。本当に素晴らしい出品者様です。皆さんもコスプレ、特に東方のコスプレをする際はstar_wxvさんのヤフオクをチェックしてみてください。クオリティもすごいし、充実度もすごいですし、落札後のやりとりも最高に丁寧です。

で、脚本、ナレーション、衣装、ときて、次はいよいよ映像製作。
弾幕映像を用いる今年の演技は映像が最も重要と言っても過言ではありません。事実、「この脚本、映像のクオリティ高くねえと成り立たねえな」と言われました。プレッシャーを感じるぜ。
昨年度はAdobeのPremiereProで映像を作成しましたが、今年度は弾幕表現ということで、あの物量を映像製作ソフトで作るには無理があります。ちなみに一昨年はprocessingで動画を作りました。こちらは弾幕を作るのにも向いていますが、東方のような複雑な動きの弾幕を作るとなると問題点が多々あります。処理落ちとか、UIの不便さとか。
ということで今年用いたのは、ゲーム製作エンジンであるUnity。そりゃあシューティングゲームなんだから、ゲームを作るソフトで作るのが一番いいよね! もちろん、Unity知識はほとんどありません。C#をいじるのも初めてです。
まずやったことは、Unityの公式チュートリアルに存在する、2Dシューティングゲーム製作チャートの学習。シューティングゲームを成り立たせる基本的な雛形を学んでいきます。敵や弾のアニメーションを作り、Prefabに登録し、ゲームシステムや敵の動きをプログラムでデザインし、あとは画面外で弾が消えるエリアの作成とか、ここには書ききれませんが非常に項目が多く、大変でした。
なお、Unityチュートリアルは最近一新されまして、このチュートリアルはもう見れません。早めに学習しておいて良かった…… ほんと、肝が冷えました。
で、そのチュートリアルで作り上げた平凡なシューティングゲームをもとにして、弾幕ゲームとしてのシステムを一つ一つ追加していきます。弾の動きは、直線移動、加速度移動1(負の加速度の場合、スピードが0になると止まる)、加速度移動2(負の加速度の場合、スピード0になるとそのままマイナス方向に速度が増え続ける)、超加速度移動、の四つ。あと、特定のオブジェクトに向かって弾が飛んでいくプログラムや、特定のエリアにぶつかったら弾が別の場所にワープしたり、新たな弾を生成するプログラム。弾が発射されるまでに任意時間遅延させるプログラムや、弾自体をローカル座標で回転させるプログラムとか。ちょっといくらでも語れてしまうのでもう自重します。Unityに慣れている方は何でもない作業かもしれませんが、私にとってはとても新鮮な創作経験になりました。
そして、弾幕を作り終わったらそれをPremiereにぶちこんで、去年と同じように映像を作っていきます。Premiere自体での作業も去年とは比べ物にならないくらい長かったです。
映像が完成したときはもう、自分で自分の映像に感動して限界化していました。あ、映像見たいかたは個人的に連絡くださればお渡しします(配布や拡散は絶対におやめください)。

映像が完成したのは、忘れもしない11/9、教室リハーサル翌日の土曜日。調布祭まであと2週間。この時点で、ダンスを含め、舞台演技はほぼ手付かずです。死ぬんだぁ……
さて今回の演技ですが、基本的に予選は霊夢中心、決勝は魔理沙中心で舞台が進んでいきます。予選決勝で主人公が入れ替わるわけですね。これを自機チェンジといいます(違
なので私が予選のダンスや演技を作り、相方が決勝のダンスを作るって感じで進めました。決勝の方が長くて大変なのはほら、映像製作を私が担当した分ということで……(震え声
そして今回、ダンスにも新しい試みがありまして。何を隠そう、ソロパートの存在です。予選も決勝も、まず壇上に上がるのは1人だけ。これによって予選と決勝それぞれの演技の主人公が誰かということを強く印象付けます。
私が担当した予選では、とにもかくにも「緊張感」を意識しました。神社奉納パートではあえて演者の動きを少なくし、舞台の雰囲気や衣装によってお客さんを徐々に幻想郷へと引き込んでいきます。そしてラストの曲で一気に盛り上がり、弾幕表現と舞台を大きく使ったダンスでお客さんを圧倒する。そんな舞台構成です。
11/9でゼロだった振り付けは、死ぬ気の振り付け作りによって11/11にはほぼ完成しました。キモい。そして11/15には、予選決勝、どちらの振り付けも団体内で暗記するまでにこぎつけました。ほんと、ここらへんが私達のチートポイントです。年の功。
そして衣装をフル装備した練習や、映像を用いるための立ち位置の確認なども踏まえて、演技が完成したと言えるのが11/20。調布祭直前の最後の授業日であり、舞台リハーサルの当日ですね。

さて、今回の私達の舞台の製作秘話(?)としては、ここらへんで終了しようと思います。書き漏らしたことも沢山ありそうですが、思い出したら書いていきます。
そしてリハーサルやミスコン当日の話、私達の実際の演技の解説については、また別記事にまとめようと思います。(それを期待してここまで読んでくださったかたがいましたら大変申し訳ありません申し訳ポイント4です)。

お付き合いくださりありがとうございましたm(_ _)m