ミスコンについて_1.自分語り編

2019年度、博麗神社萬歳楽という団体名で2人でuecミスコンに参加させていただき、博麗霊夢を演じさせていただいたみぎきと申します。
あまり文章が得意ではありませんので読みにくいのはご勘弁くださいm(_ _)m

何から話せばいいのかわからん……

とりあえず自分の話からします。
2018年で優勝しまして。そもそも2019年は出場するの?って話になったわけです。
でも、出場すること自体にそこまで迷いはなかったと思います。uecミスコンほど自分の感情を揺さぶるものは人生で無いし、出なかったら観客席で後悔をするのがわかりきっていたので。
自分語りですが私は高校生活の軽音部でもかなり充実した活動をしてまして、5バンド掛け持ちしたり部長やったり、それ自体がどうってわけではないですがとにかく本気で打ち込んでいました。でもそれ以上にuecミスコンは本気になれるコンテンツでして、それって凄いことだと思います。幸福なことです。
話は戻って、出場する理由ですが、先ほど書いた理由の他にも「まだやりたいことがあったから」というのが大きいです。それはボカロとか東方とかいう話ではなく、舞台演出の話です。私たちは去年、映像を用いてミュージカルをミスコンで成立させましたが、正直あの映像はそれぞれ一晩で作ったくらいのものです。映像を使うという観点において全く私の底を見せられていませんでした。その底まで全て出し切りたい。そんな強い思いがありました。加えて、ミスコンのある意味上等手段ですが、「持ち物」を使って演技をしたいという、これまた強い思いというか憧れがありました。

ただそこらへんは私個人としての理由です。私たちは2人組のミスコン団体としてずっと演技してきました。私がやりたいから、という理由のみで演技を全て決めてしまうことはできません。
例えば去年は、ボーカロイドの「鉛姫シリーズ」という、お互いが大好きなコンテンツを用いることで団体としての思いを一つにして演技をしました。もしも私が相方のどちらか片方が好きなコンテンツを用いていたら、演技する上で様々な齟齬を感じてしまったと思います。
このようなことに悩むのはウチの団体特有ではないかと思います。普通、と言っていいかはわかりませんが、やりたい演出やコンテンツがあるならば、同じ想いを持つ同士を募って団体を作るのが自然ではないでしょうか。もちろん同じ想いを持つ人はそう簡単に見つからないので、思い切ってソロ参戦する、というのも近年では珍しくありません。
しかし、だからこそウチの団体はこの2人でやらなければならない、という思いがありました。過去3年間の共演経験は軽くありません。お互い何が出来るか、何をしてきたか、どういう苦悩をしてきたか。それによる2人の舞台感覚の整合性はチートです。ずるい。

そういうわけで今年も、去年の鉛姫シリーズのような、お互いの想いを一致させるためのジャンル選びが始まりました。しかし当然ながら、そんなもの滅多にありません。「今年何も決まってませーん」みたいな状態が少し長く続きました。
そんな中、一つの転換期は3月。去年の鉛姫シリーズの話がありましたが、実はその作者さんが東方アレンジをしている時期があったんですよね。相方は鉛姫シリーズだけではなくそれらの楽曲も聴き込んでいたと。かたや私は、バリバリの東方好きです。ならばそこらへんをなんやかんやして、「東方Project」でいっこ舞台が出来るんじゃないかなと。
東方なんて大きなコンテンツ、なんで思いつかなかったんだって話ですが、東方ってボカロに比べて踊ってみた動画が乏しいんですよね…… ボカロは動画サイトに楽曲を上げるのがメジャーですが、東方は同人即売会でアレンジCDを出すにとどまることが多いイメージがあります。なので同じく動画サイトに投稿するのがメインの踊ってみた界隈は、ボカロに親和性が高くて東方とは親和性低いんじゃないかなって思います。なので、実は2016年から東方やりたいって思っていたのですが、東方はダンスが少ないから出来ないって先入観がありました。しかしです。よく考えたら私たちは去年、オリジナル振り付けに挑戦して舞台を作ったんですよね。ならば東方だろうと、かなり自由な舞台に挑戦できるなと……この時まで気がつきませんでした。盲点。
あ、ちなみにダンスが無いとミスコン舞台出来ないっていうのは私たちがダンスやりたいからってだけです。こだわりポイントです。

さて、東方やるって決まった瞬間、わたしの中でほぼ演技イメージが決まってしまいました。東方厨特有の暴走ですね。
だって全部出来るんですよ私のやりたいこと。弾幕っていう映像表現と、お祓い棒っていう手持ち道具による舞台。ついでに弾幕表現するのにうってつけの楽曲も心当たりがありました。何より、東方Projectにはあらゆるコンテンツの中で最推しの音楽サークルがある。先ほど言った楽曲もそのサークルさんの楽曲です。

そのサークルさんの紹介をします。凋叶棕(読み方はティアオイエツォン(中国語で枯葉色って意味だった……はず…(東方の原曲にティアオイエツォンって曲があったりもします)))ってサークルさんで、東方同人ではけっこう有名なサークルさん。最近では、AZKiさんの楽曲「without U」を手がけたのがこのサークルの中の人であるRD-soundsさんだったりします(AZKiさんには詳しくないので間違ってたら勘弁)。東方アレンジでは非常に濃密、重厚、軽快、時に扇情的だったり暴力的だったり、とにかく世界観の深みに私は魅力を感じております。東方アレンジCDに漢字一文字でテーマを付けるのも特徴でして、各楽曲それぞれ自体だけではなく、CD全体として一つの作品に仕上げる手腕はあっぱれです。あっぱれ!!(一般観客並感
私は凋叶棕さんの東方アレンジCDを全て揃える程度のファンです。いまは全部で……ちょうど30枚かな?

まあしかしウチらはソロ団体じゃないので、私の演技イメージを団体に押し付けるわけにはいきません。とりあえず凋叶棕さんの楽曲で私が舞台で使いたいと思った曲を相方にも聞いてもらいました。そして私も、相方が聴いていた東方アレンジ楽曲を聴きこみます。その上でまず私が舞台脚本を作り、相方に聞いてもらいます。その上で相方にも舞台脚本を作ってもらい、私がそれを見る。そんな繰り返しの作業がありました。

一番最初、私が考えた脚本のようなものを口頭で相方に伝えたときは、良くも悪くも「今年まじで苦しい一年になるな」とお互い感じたのではないでしょうか。というのも、東方に対する考え方や知識がお互いで違いすぎる。東方というのは、東方という言葉だけで一致団結出来るほど浅い世界ではないということを強く実感しました。そういう意味では、去年やったようなコンテンツによる団体意識の統制には失敗したかもしれません。

ちなみに私が相方に伝えたのは、「東方を紹介する舞台を作りたい」というような内容だったと思います。
東方は弾幕シューティングゲームなのですが、その弾幕がパッケージ化されているのが大きな特徴です。分かりにくい言い方ですね。一番単純な言い方をすると、東方の弾幕って個数が数えられるんですよ。このステージのボスのこのキャラクターは弾幕を6つ持ってて、1つ目の名前がこれ、2つ目の名前がこれ……みたいな。ほかの弾幕シューティングゲームは、色々な弾幕を放って来ますが、ステージ中の何秒地点から何秒地点までの弾幕……みたいな言い方をします。ボスの第何形態の弾幕、のような言い方は出来るかもですが、弾幕に名前をつけて離散化しているのは東方だけじゃないでしょうか。
そんな弾幕の離散化、をするために、東方には「スペルカードルール」という設定が存在します。弾幕に一貫的な意味を持たせ、名前をつけたものを一枚のカードとして扱いましょう。そしてそのカードをお互い規定枚数使い、すべて突破した方を勝者としましょう。そんな感じのルールです。このルールに従っているため、東方の世界である幻想郷ではどのキャラクターも「スペルカード」という離散化された弾幕を放ってくるわけです。
そんな「スペルカードルール」ですが、もちろんゲームの都合としてだけでなく、ちゃんと幻想郷の世界観に合致した設定が存在します。幻想郷は博麗大結界という結界で隔離されたいわゆる異世界なのですが、そこには妖怪や神霊、妖精などの幻想的な存在が数多く住み着いています。もちろん人間もです。そんな世界で、片や妖怪は人間を食い、片や人間は妖怪を退治する、みたいなパワーバランスが成り立っています。しかし妖怪が人間を食ってしまうと、隔離された小さな世界である幻想郷ではどんどん人間が減ってしまいます。それによるパワーバランスの崩壊を恐れた妖怪たちが提案したのが、「スペルカードルール」です。つまりは命のやり取りをせず、弾幕という競技で人間と妖怪の争いを完結させましょうってお話。

あ、もしも東方原作設定ガチ勢の方がこの文章を読んでたら、細かい間違いなど有ると思いますが、スルーしていただけると……(懇願

こんな感じで、東方に存在する「スペルカードルール」を紹介し、同時に東方の世界観を紹介する。そういった舞台を作ろうっていうのが私の原案であります。
何故こんな原案になったかというと、やはり凋叶棕さんの楽曲が大きな一因です。「霊夢が幻想郷にスペルカードルールを布告する」という内容の、緊張感と重厚感マシマシの曲があるんですよね。その楽曲をそのまま用いて舞台を作り、ラストはスペルカードをプロジェクター映像で再現して終わり!という舞台イメージでした。

でもこんなの伝わるわけがない。ざっくり説明しても上記くらいの長文になるのに、考えがまとまりきっていない状態で、実際はこれ以上の情報量を、口頭で相方に伝えたわけです。「は?」って感じだったのではないでしょうか。
なにせ、これらの話は東方の裏設定と言ってもいい、知らなくても全く問題ない知識です。私としては長年のファン活動で積み重ねた知識ですが、それを小一時間で全て説明してもピンと来るはずありません。なんなら私は説明下手なので、支離滅裂な言葉を発していたことでしょう。
あとは伝わるかどうか以前に単純な問題点も多量ありまして。この物量を舞台で5,6分でやるの???とか、これを観客に説明して伝わるの???とか、あとは相方が好きな東方アレンジ楽曲を使う場面や時間はあるの???とか。まさに前途多難。

そこで一旦私の原案脚本は忘れて、相方にも脚本を作ってもらいます。そちらの内容は、分かりやすいストーリー仕立ての妖怪退治。弾幕映像表現を用いたバトルの舞台って感じだったと思います。
この脚本は、最終的に使うことは無かったとはいえ、お互いの東方という演技内容に対するイメージの違いを明確化してくれました。私は重厚な世界観を再現し、歴史的事実を述べていくような緊張感のある舞台。相方は原作ゲームに近い、物語に沿った弾幕バトルの舞台、という感じに。

この時点で、今年度は「東方舞台というイメージを2人で一致させる」ということが最初で最大の課題であると認識しました。
そこからは一つ一つ、丁寧かはわかりませんが原作設定や凋叶棕さんについての知識を私が語って共有していきます。まあ知識自体の共有はそこまで難しくありません。しかし、私が抱いている「これは物凄い舞台になる!」という感情まで共有出来るかというと不可能でした。神社の儀式をモチーフにした舞台の緊張感や、弾幕映像による綺麗な舞台演出は、今年の演技を見てくださった方はピンと来るかもしれませんが、この時点では私の頭の中にしかありません。先に映像を作ってしまえばイメージの伝達は容易だったかもしれませんが、この演技内容でミスコンをやるという合意があったわけでもないのに映像に着手するわけにはいきません。
なお、ここらへんから完全に私主導で舞台を作ってしまっていたのは申し訳ポイントです。ごめんなさい、、

そんなやり取りが長く続いていった結果、私の頭の中を可能な限り全て出し切った一つの脚本が完成しました。舞台でやりたいことの細やかな解説と、それに対応する東方原作設定の説明。それらを一つにまとめた、長ったらしい脚本です。
それを相方に見てもらったとき、私の舞台イメージの一端を、やっと共有することができました。これが5月の下旬の話です。あと、あまりにも高密度な脚本だったために、相方が好きな楽曲の入る余地が無くなったのは申し訳ポイント2です。たくさんあります。ごめんなさい、、

さて、やっと本当の原案と言える脚本が完成し、この方向性で舞台を作ろうというのが確定したわけですが。問題点だらけなのは変わりありません。
まず一番の問題は時間です。予選だけで最低でも10分は欲しいなって感じでした。凋叶棕さんの楽曲って基本的に6分以上あるのに、それを3曲予選でやろうって話だったので当たり前です。これはもう音源編集を頑張る以外にありません。楽曲を切って貼って切って貼って、涙を飲んで一曲ボツにして、それでもまだ切って貼って、5秒縮めるのに数時間かけたりとかしました。でもそのおかげで、しっかり完成するわけです。予選6分、決勝8分の音源が……!!!
……
はい、その後、演技時間は予選5分、決勝6分だと言われて阿鼻叫喚となります。結局決勝は8分に変更されましたが、予選は血を吐きながら1分削りました。
ちなみに今年は数秒のオーバーはOKだったみたいです。5秒縮めるのに数時間かけた私の努力はいったい。。

さてこれで、時間の問題は一応解決しました。でもそれは、やりたい楽曲が演技時間内に収まっただけに過ぎず、まだまだ問題は山積みです。
次にやったのは、東方原作設定の複雑な世界観を観客に伝えるためのナレーション作成。ゆっくりボイスで音源に重ねて仮ナレーションを付けていきます。
その結果できたのが、これ↓

「ここは幻想郷。人と、人でないもの。神、妖精、幽霊、そして妖怪が蔓延る小さな世界。そんな小さな幻想郷は、度重なる妖怪の決闘によって崩壊の危機に瀕していた。
人と妖怪、その相容れないはずの存在を同時に救うべく、幻想郷の制定者たる巫女、博麗霊夢は、誰も傷つくことなく決闘をするルールを制定する
一つ、妖怪が争っても誰も傷つけぬこと
一つ、人間と妖怪が対等に決闘できること
一つ、実力主義を否定すること
一つ、美しさと思念に勝る物は無し
霊夢はこれらの理念を……
弾幕」に託した
新たなるルールが、いま、告げられる——!
(曲)
手に握られた一片のカード。
そこに記された弾幕の技が自らの手札である。
相手が持つ手札、つまりは弾幕に当たってしまったら負け。全てを突破したら勝利となる。
互いを殺すことなく美しく行われる決闘。
それが、新たなる定め。
スペルカードルールである。」

これ舞台で垂れ流すの?
難解すぎてファイナルファンタジーのオープニングみたい、と言われた伝説のナレーションです。
何が問題かというと、まずは密度。文字で書くとわかりにくいですが、舞台ナレーションとしてこれらをどんどんと流すと、次から次へと新しい情報が出てきて訳が分からなくなります。スペルカードルールの解説文としては良いかもしれませんが、解説文を舞台上で音声で流したところで、お客さんの心は離れていくと思われます。
あと、演技とナレーションのちぐはぐさ。ナレーション中、神社奉納的な舞を霊夢が踊るのですが、ナレーションは解説文なのに、解説文と全く関係ない演技を霊夢はしているわけです。熱心にナレーションを聞いたところで、じゃあ舞台上に居るのは誰?? 何を何のためにしてるの?? と。謎しか存在しない舞台となります。
さらには、弾幕って何だ? という問題。このナレーションで弾幕決闘の説明をして、ナレーションが終わったら弾幕を映像で表現するわけですが、弾幕を知らない人からしたら「なにこれ?」となるわけです。わたし達はシューティングゲームにおける弾幕を知っているので、映像に弾幕を写して、その中をぬって飛び交う様を演者が表現してるんだな〜と理解できますが、弾幕を知らなければそもそもこれが「攻撃」であることも知らないわけです。決闘の話をしていたのに、なんか知らんけど綺麗な幾何学模様を背景に踊ってるなーと。

これらは本当に本当にやっかいな問題でした。悩みに悩んで悩み抜いた結果、ある一つのことに気がつきます。この演技脚本には、世界観としての東方と、ゲームとしての東方が混在している、と。
どういうことかというと、ナレーションでは世界設定としてのスペルカードルールを説明しているのに、その後の映像表現では突然ゲーム画面のような映像が出てくるわけです。これを成り立たせたいなら、世界設定としてのスペルカード説明が終わった後に、「ちなみにこれは原作がシューティングゲームでして、非常に小さな当たり判定の自機で画面を埋め尽くす弾を避ける弾幕ゲームというジャンルで、これから流す映像は自機がいないけど、一応舞台上の演者が自機という設定で、弾幕を避けることをダンスで表現します!」みたいな台無しな説明が必要になります。

そんなわけで私が行ったのは、舞台からあえて「シューティングゲーム」要素を排除すること。シューティングゲームというものを知らなくとも理解のできる舞台にフォルムチェンジする作業です。
まず、スペルカードルールの理念は四つありましたが、あえてそのうちの一つ、「美しさと理念に勝るものはなし」のみを採用します。それによって、「命のやり取りをせずに美しさで競うようになったんだよー」という至極わかりやすい展開になります。加えて、よくわからん綺麗な弾幕を見せても、「なるほど、美しさで競うから綺麗なんだな!」と、爆速理解してくれるはずです。弾幕ゲームという背景を一切廃した結果、東方を知らなくても弾幕映像表現が楽しめるわけです。天才か。
そしてもちろん、「全てのスペルカードを突破したら勝ち〜」みたいな部分も廃しました。これもゲーム的都合の部分なので。
さらに霊夢魔理沙のようなキャラクターにもちゃんと焦点を当てます。天皇陛下憲法を発表する儀式(適当)みたいなイメージで、神社のお清めによって場を整え、スペルカードルールという新たな憲法を公布する、みたいな。そんな方向性で舞台を再構成していきます。魔理沙は予選では完全お手伝いモブでしたが。
さらに細かい言い回しを色々と簡略化していった結果、ナレーションはここまで進化します↓

〜忘れ去られた世界、幻想郷。ここは、その幻想郷に存在する、小さな神社である〜
〜奉納の舞を執り行うは神社の巫女、霊夢霊夢は強い霊能力を持ち、その力を以て妖怪退治をし、是を生業としていた〜
〜妖怪との諍いにより、やがて崩壊の危機に瀕した幻想郷。崩れかけた世界で、霊夢は、妖怪からのとある提案を受け入れた〜
〜それは、人間と妖怪との関係を大きく変える、新たなる掟(おきて)であった〜
〜この世界に新たなルールを受け入れ、施工する。今日(こんにち)、執り行われるは、そのための神社奉納〜
〜新たなる定めが、いま、告げられる〜
(曲)
〜ひとつ、美しさと思念に勝るものは無し〜
〜人間も妖怪も、その力で相手をねじ伏せることなく、放つ攻撃の美しさで相手をねじ伏せる〜
〜誰も傷つくことなき決闘。それが新たな定めとなる決闘法、スペルカードルール〜
霊夢と、その友人の魔法使い、魔理沙は、いま、演舞として、神に捧げる。その新たなる美しき決闘を〜
(曲)
〜こうして幻想郷は決闘の災禍ではなく、美しい弾幕が飛び交うようになった〜

物量自体はやはり多いですが、非常に洗練されたナレーションになりました。本当に、ここまで極まったナレーションが完成したのは相方のおかげです。私は文章を書くのが下手なので。
ちなみにこれが完成したのは10月に入ってからです。時間が飛んだな? 同人イベントで個人誌出したりとか旅行行ったりとかしたのも原因ですが、時間をかけて苦労したのも事実です。

なお、ここまで全て予選の話。
決勝はまた別の問題が存在します。

神社の儀式や憲法公布で例えたように、予選はわりとお固い舞台ですが、一方で決勝は魔理沙個人の感情に焦点を当てた、わりと去年に近い感じのミュージカルっぽい演技です。
決勝での苦労点を説明する前に、今年の裏テーマというか、隠れた挑戦について説明しないといけません。実は今年、キャラクターに対応するセリフを一切使いませんでした。全てがナレーションと楽曲で構成されています。
キャラクターの声、というのはミスコンでは採点項目にはなりにくいです。なぜなら、女っぽい声に加点するならば、知り合いの女子にセリフを頼むのが最強だからです。もちろんマイクを通して舞台上の演者が女声を発したら加点ですけどね。しかし何となく、声というのはステージの印象に大きく響きます。
そんな矛盾への一つの投げかけとして、今回はそもそもセリフを使わないという挑戦を行いました。いかがでしたでしょうか。

さてそんなセリフの代わりとなるのが「歌詞」です。実は予選の歌はすべて霊夢のセリフ、決勝の歌はすべて魔理沙のセリフ、になっています。で、予選はまあ霊夢のセリフだと思ってもらえなくても舞台が成立するのですが、決勝は予選と違って魔理沙1人に強く焦点を当てた演技なので、セリフと歌詞が同一であるとお客さんにも理解していただく必要がありました。
まあこれは単純な解決策を用いまして。漫画のような「ふきだし」を画面に表示して、それに沿って演者が動くことで歌詞とセリフの一致を示唆しました。そして徐々にふきだしを減らしていき、何となく歌詞はセリフなんだなーという刷り込みをお客さんに対して行ったつもりです。

次に、決勝は魔理沙個人のストーリーなのですが、大まかに言うと「空を飛ぶ霊夢に憧れた魔理沙が魔法使いを目指して、苦悩の末に夢が叶い、一緒に空を飛ぶ!」という感じです。簡単に思えますが、でもこれ、魔理沙の主観的な話だから、ナレーションでなにもかも説明しちゃうと変なんですよね。しかし歌詞で説明するのは限界があり、どうしようかというともうダンスで表現するしかありません。
決勝二曲目。ほぼ感情のみで表現した特異なダンスだったと思います。ストーリーが伝わったでしょうか?

さあこれでナレーションも決まり、予選と決勝の演技内容がだいたい決まりましたと!
苦労したナレーションは、我が団体の3人目のメンバー、Wesさんに読み上げを託しました。Wesさんは2016年度にもナレーションを担当していただいたのですが、私達の2016年度演技は立派すぎる黒歴史でして、それに付き合わせてしまったWesさんにはずっと申し訳ない思いがありました。そんなWesさんにお詫びとお礼をする気持ちで、Wesさんのナレーションで改めて質の高い演技を披露しようと。そういう思いでした。
もちろん、お詫びやお礼の気持ちがなくてもWesさんに頼んでいたと思います。それくらい素晴らしいお声の持ち主です。

で、Wesさんに、ナレーションのゆっくり音声が入った音源動画を提出しました。そしてしばらくしてWesさんから仮録音ナレーションファイルを提出していただいたのですが、そのファイルを開いて目を疑いました。
なんとWesさんなりに音源動画を深く研究して舞台解釈を持っていただいたみたいで、ここはこれで大丈夫かどうか、これで合ってるかどうか、改善点はないか、みたいなことが書かれていたのですが、その舞台解釈がドンピシャ。ここまでのこの記事に書いたほぼ全てのことを音源とナレーションのみから考察されてしまっていました。脚本すらお渡ししていなかったのに、です。
しかもその舞台解釈により、さまざまなパターンのナレーションを作っていただけたのですが、もう、どれもこれも良すぎて選べないレベルです。こんなに質の高い仕事をしてくださったんだから、自分たちも頑張らなければと。ものすごい励ましとなりました。本当にありがとうございます。

でもって、お次は衣装の話。この舞台内容を鑑みるに、生半可な衣装ではダメだという思いがずっとありました。東方はシューティングゲームであり、登場キャラクターは当然、アイドル衣装を着ているわけではありません。あくまで普段着であり、となると舞台としては地味なわけです。
しかしこれも団体内で舞台イメージがなかなか共有出来なかった弊害により、その感覚共有が出来ていませんでした。私が「東方はメジャーだからいくらでも(クオリティの高い)衣装は(きっと)ある」みたいなことを言ったために、「東方は衣装が充実してるから購入を焦る必要はない」のような誤解を与えてしまいました。申し訳ポイント3です。その結果、衣装選びは納期の関係もあって結構ギリギリのムーブをすることになりました。
さて、霊夢の衣装についてちょっと詳しく話そうと思います。霊夢の衣装は、最初はあの衣装ではなく、もうちょっと原作の霊夢に近い、上下赤色のものを用いる予定でした。ただしその衣装はクオリティは高いのですが、フリルマシマシであり、ちょっとそれは舞台イメージと違うかなとも思っていました。そんな中、東方やその他の高クオリティな衣装を受注製作で作り、ヤフオクを通じて売買しているstar_wxvさんという方を見つけました(実はもともと用いる予定だったフリル霊夢衣装もこの方が製作者だったのですがその話は割愛)。
コスプレ衣装というのは、同業者ならばわかると思いますが、ネットで購入する場合は一か八かです。個人製作とか業者とか関係なく、写真と全然違うものを送ってきたり。サイズが違ったり、ひどい時はお金だけ盗られて何も送られてこなかったり。そんな中、ヤフオクでコスプレ衣装を製作、出品しているこのstar_wxvさんは、出品者評価が非常に高く、しかもコメントを見る感じ、不正して稼いだ高評価でもありませんでした。そんな人が出品している、あの霊夢の衣装を見つけたとき、もはや運命を感じました。私の舞台には、絶対にこの衣装が必要だと。
しかしなんと、製作に6週間かかり、さらには台湾在住ということで、発送してから届くまでにも1週間弱かかると。ミスコンに間に合わない計算でした。それでもこの衣装に惚れ込んだ私は、すぐにstar_wxvさんにメールで事情を連絡し、なんとか作ってくれないかとお願いしました。出品者コメントにあった通り、すぐに丁寧な返信が返ってきまして、曰く、特急対応にするので残業代を払ってくだされば製作可能だと。即決です。即決で残業代を払いました。
そしてヤフオクとのやりとりでは、細やかな製作過程まで報告していただきまして。本当に素晴らしい出品者様です。皆さんもコスプレ、特に東方のコスプレをする際はstar_wxvさんのヤフオクをチェックしてみてください。クオリティもすごいし、充実度もすごいですし、落札後のやりとりも最高に丁寧です。

で、脚本、ナレーション、衣装、ときて、次はいよいよ映像製作。
弾幕映像を用いる今年の演技は映像が最も重要と言っても過言ではありません。事実、「この脚本、映像のクオリティ高くねえと成り立たねえな」と言われました。プレッシャーを感じるぜ。
昨年度はAdobeのPremiereProで映像を作成しましたが、今年度は弾幕表現ということで、あの物量を映像製作ソフトで作るには無理があります。ちなみに一昨年はprocessingで動画を作りました。こちらは弾幕を作るのにも向いていますが、東方のような複雑な動きの弾幕を作るとなると問題点が多々あります。処理落ちとか、UIの不便さとか。
ということで今年用いたのは、ゲーム製作エンジンであるUnity。そりゃあシューティングゲームなんだから、ゲームを作るソフトで作るのが一番いいよね! もちろん、Unity知識はほとんどありません。C#をいじるのも初めてです。
まずやったことは、Unityの公式チュートリアルに存在する、2Dシューティングゲーム製作チャートの学習。シューティングゲームを成り立たせる基本的な雛形を学んでいきます。敵や弾のアニメーションを作り、Prefabに登録し、ゲームシステムや敵の動きをプログラムでデザインし、あとは画面外で弾が消えるエリアの作成とか、ここには書ききれませんが非常に項目が多く、大変でした。
なお、Unityチュートリアルは最近一新されまして、このチュートリアルはもう見れません。早めに学習しておいて良かった…… ほんと、肝が冷えました。
で、そのチュートリアルで作り上げた平凡なシューティングゲームをもとにして、弾幕ゲームとしてのシステムを一つ一つ追加していきます。弾の動きは、直線移動、加速度移動1(負の加速度の場合、スピードが0になると止まる)、加速度移動2(負の加速度の場合、スピード0になるとそのままマイナス方向に速度が増え続ける)、超加速度移動、の四つ。あと、特定のオブジェクトに向かって弾が飛んでいくプログラムや、特定のエリアにぶつかったら弾が別の場所にワープしたり、新たな弾を生成するプログラム。弾が発射されるまでに任意時間遅延させるプログラムや、弾自体をローカル座標で回転させるプログラムとか。ちょっといくらでも語れてしまうのでもう自重します。Unityに慣れている方は何でもない作業かもしれませんが、私にとってはとても新鮮な創作経験になりました。
そして、弾幕を作り終わったらそれをPremiereにぶちこんで、去年と同じように映像を作っていきます。Premiere自体での作業も去年とは比べ物にならないくらい長かったです。
映像が完成したときはもう、自分で自分の映像に感動して限界化していました。あ、映像見たいかたは個人的に連絡くださればお渡しします(配布や拡散は絶対におやめください)。

映像が完成したのは、忘れもしない11/9、教室リハーサル翌日の土曜日。調布祭まであと2週間。この時点で、ダンスを含め、舞台演技はほぼ手付かずです。死ぬんだぁ……
さて今回の演技ですが、基本的に予選は霊夢中心、決勝は魔理沙中心で舞台が進んでいきます。予選決勝で主人公が入れ替わるわけですね。これを自機チェンジといいます(違
なので私が予選のダンスや演技を作り、相方が決勝のダンスを作るって感じで進めました。決勝の方が長くて大変なのはほら、映像製作を私が担当した分ということで……(震え声
そして今回、ダンスにも新しい試みがありまして。何を隠そう、ソロパートの存在です。予選も決勝も、まず壇上に上がるのは1人だけ。これによって予選と決勝それぞれの演技の主人公が誰かということを強く印象付けます。
私が担当した予選では、とにもかくにも「緊張感」を意識しました。神社奉納パートではあえて演者の動きを少なくし、舞台の雰囲気や衣装によってお客さんを徐々に幻想郷へと引き込んでいきます。そしてラストの曲で一気に盛り上がり、弾幕表現と舞台を大きく使ったダンスでお客さんを圧倒する。そんな舞台構成です。
11/9でゼロだった振り付けは、死ぬ気の振り付け作りによって11/11にはほぼ完成しました。キモい。そして11/15には、予選決勝、どちらの振り付けも団体内で暗記するまでにこぎつけました。ほんと、ここらへんが私達のチートポイントです。年の功。
そして衣装をフル装備した練習や、映像を用いるための立ち位置の確認なども踏まえて、演技が完成したと言えるのが11/20。調布祭直前の最後の授業日であり、舞台リハーサルの当日ですね。

さて、今回の私達の舞台の製作秘話(?)としては、ここらへんで終了しようと思います。書き漏らしたことも沢山ありそうですが、思い出したら書いていきます。
そしてリハーサルやミスコン当日の話、私達の実際の演技の解説については、また別記事にまとめようと思います。(それを期待してここまで読んでくださったかたがいましたら大変申し訳ありません申し訳ポイント4です)。

お付き合いくださりありがとうございましたm(_ _)m