ミスコンについて_2.舞台解説編

Pumpkin_heads兼カドワナルカ楽劇団兼博麗神社萬歳楽のみぎきです。

自分の作品を自分で文章解説するのはダサい? しるかそんなもん!
今年の演技は思い入れが強いので、一つの記事として語っていきます。そもそも他人の作品の解説も混じってるし、、

まずは楽曲紹介をいたします。

予選
・幻想萬歳楽 (伝、track1、凋叶棕)
・始符「博麗命名決闘法布告ノ儀」(掲、track1、凋叶棕)

決勝
・スターシーカー (憩、track1、凋叶棕)
スターゲイザー (徒、track6、凋叶棕)
・無題「空飛ぶ巫女と普通の魔法使いのいつもの毎日」(掲、track12、凋叶棕)

伝、掲、憩、みたいなのは東方アレンジCDのタイトルです。この漢字一文字が、CDのテーマを端的に表現しています。そしてtrackは、CD内で曲が収録されている位置というか順番。凋叶棕さんは言わずもがな、サークル名ですね。

一つ一つ説明していきます。

・幻想萬歳楽
弊団体の名前、「博麗神社萬歳楽」はこの曲からとっています。この曲が収録されているCDは「伝」。東方心綺楼のラスボスに「秦こころ」というキャラクターがいまして、このキャラクターは能楽が趣味であり得意だったりします。それに関連して、この「伝」というCD作品は、かなり厳密な能楽の構成によって作られています。
能楽には五番立という、五種類の演目を決まった順に演じる方式があります。演目の内容はそれぞれ、「神」、「男」、「女」、「狂」、「鬼」。このそれぞれに対応する楽曲が「伝」には正しい順番で収録されているため、CD全体で能楽の正式な五番立になっているのです。
また、正式な能楽では、「翁」という、「能にして能にあらず」と称された儀式的な演目が最初に演じられ、最後に「祝言」を添えて全演目が幕を引く。
この「翁」に対応する楽曲がまさに、私達が舞台で一番最初に用いた「幻想萬歳楽」です。つまり、ミスコン予選の舞台、この曲は「翁」としての役割があり、能楽ではありませんが神社としての儀式的演目として、雰囲気作りに使用させていただきました。とうとうたらりたらりら。

・始符「博麗命名決闘法布告ノ儀」
こちらの収録CDは「掲」。スペルカードを掲げる、の意です。CD内では各楽曲がスペルカードとしての意味を持ちます。そのためスペルカード風に、○○符「××」みたいな形式で曲名がつけられています。この楽曲は始符。その名の通り、全ての始まりとなる命名決闘法(=スペルカードルール)が制定された儀式を表現した曲です。
告げる!の掛け声から曲がスタートし、幻想郷全体へ、新たなる定めを霊夢が布告する様は圧巻。そして曲の中盤からはスペルカードに対する霊夢の強い思いが綴られていきます。大サビ前のパートでは霊夢の実際のスペルカードに対応する、非常に印象的な歌詞が一つ一つ提示されます。
ちなみに、霊夢がスペルカードルールを布告する儀式を行ったかどうかは原作設定では不明だったはず。この儀式自体は2次創作のみの設定です。

・スターシーカー
ここから決勝。スターシーカー 、つまりは星を探す者。魔理沙の幼少期、息苦しいお屋敷の中で空への憧れを歌った曲です。
東方詳しくないと馴染みがないかもですが、魔理沙は東方において家族の存在が言及されている珍しいキャラクター。もともと魔理沙は商家のお嬢様でした。しかし魔法使いに憧れた魔理沙は家を飛び出し、自分の人生を歩むわけです。当然、家族からは勘当されています。魔法使いになるってことは人を止めるってことですし。
決勝ではそんな魔理沙が魔法使いを目指す様を描いた、予選に比べると王道的なストーリーで構成されています。

スターゲイザー
スターゲイザー、星を見る者。夢や希望に溢れたスターシーカーと異なり、魔法使いを目指す魔理沙の苦悩を綴った曲です。魔法使いになることは出来ないという挫折。実家を飛び出した後悔。しかし、それでも諦められないという決意。私は映像製作中、この曲に感情移入しすぎて意味もなく限界オタクになっていたという裏話があったりなかったり。

・無題「空飛ぶ巫女と普通の魔法使いのいつもの毎日」
これは「掲」の最終トラックに収録されている楽曲で、始符「博麗命名決闘法布告ノ儀」と対をなす曲。霊夢による重厚な布告ノ儀とはうってかわって、魔理沙が新たなる定めであるスペルカード決闘に興じながら、スペルカードへの想い、霊夢に対する想いがポップでロックな音楽に乗って感情豊かに歌い上げられています。百合じゃん。や、Wesさんが百合って言ってたけど決勝のこの曲に関しては正しいです。魔理沙が言ってる「お前」って全部霊夢のことです。
そしてやはり大サビ前のパートでは、魔理沙の実際のスペルカードと対応する歌詞があります。最高です。

楽曲紹介はここまで。次はナレーションについて語っていきます。ナレーションといえばWesさんの担当。Wesさんは3パターンのナレーションを作ってくださりました。まさか様々なパターンがあるなど思っていなかったので本当に感謝の限りです。
それぞれを概説すると、パターン1は「歴史の語り部」。パターン2は「森近霖之助」。パターン3は「舞台装置」です。2は東方の数少ない男キャラクターである森近霖之助の青年ボイスのイメージ。3は感情を排した、明確な人物像を感じない妖精的なイメージ。
このどれを用いるかというのはかなり悩みました。団体内で予選のことを「ジャンル歴史番組」とか「ヒストリア」とか呼んでいたのは馴染み深く、予選はパターン1が魅力的。しかし固い儀式的な側面の強い予選では、ナレーションに対して人物像を感じないパターン3も非常に魅力的。結果的にはパターン3でお願いしたのですが、パターン1だったとしても良い舞台が出来ていたと思います。一方、決勝はそこまで悩まず、パターン2の霖之助イメージボイスを採用。実はスターシーカーとスターゲイザーの続きの曲としてスターブレイカーという曲があるのですが、それは霖之助視点で魔理沙の成長する姿を描いた曲となっています。そのため、霖之助ボイスはイメージぴったりでした。

さてここからやっと本題の舞台解説に入っていきます。

予選

始め、舞台上には誰もいません。なぜならそこはまだ幻想郷ではないから。
スクリーンに映し出されるのは鳥居の映像。そして、ナレーションが流れます。

「忘れ去られた世界、幻想郷。ここは、その幻想郷に存在する、小さな神社である」

鳥居がどんどん近づいてきて、ついには鳥居の中をくぐるように映像が流れていきます。
この鳥居はもちろん、「現実世界」側の博麗神社の鳥居。この鳥居をくぐることで、博麗大結界を通り抜ける、イコール、現実世界から幻想郷にお客さんが入り込む、という演出です。
実際は博麗神社の鳥居をくぐっても博麗大結界を抜けるわけではありませんが、しかし結界の揺らぎによっては可能性があります。

で、この鳥居をくぐり抜けてから、始めて幻想郷に住むキャラクターが登場するわけです。ここでは私の演じる霊夢ですね。
霊夢は舞台上で神社奉納andお清めの儀を行います。まずは舞台上に上がって、舞台上手側に向かって一礼。本当は神社(スクリーンの画像)に向かって一礼したかったのですが、さすがに舞台に上がっていきなりお客さんに背を向けるのはどうかと思い、横向きに礼をしました。そしてさらに、次はお客さんに向かって改めて一礼します。
なお、この礼の角度はだいたい45度です。神様に対するお辞儀なので最高礼である90度の礼をしたかったのですが、可愛さとの兼ね合いで断念しました。

ナレーションが続きます。
「奉納の舞を執り行うのは、巫女、霊夢霊夢は強い霊能力を持ち、その力を持って、妖怪退治を生業としていた」
これで、誰がどこで何をしているのかという、最低限の舞台説明が完了します。そして霊能力や妖怪退治というワードから、それとなく東方の世界観をお客さんに示唆していきます。

一曲目、幻想萬歳楽。先ほど説明したように、能楽の正式な翁つき五番立で、「翁」に対応する楽曲です。能楽における役割と同様、あくまで儀式的な演目曲であり、これ自体がストーリーに関わることはありません。ストーリーはナレーションによって進行していきます。
ちなみにここで霊夢が踊っている神社奉納の舞ですが、これを純粋な神社奉納(神楽の舞)だと見なすと、お客さんに向かって踊るのではなく、スクリーンに写る神社に向かって踊るのが適切です。しかし、霊夢が持っている「お祓い棒」に注目。お祓い棒は神様への捧げものとしての意味がありますが、神様の依り代としての意味もあります。神様の依り代としてのお祓い棒は、皆さんご存知の通り、お清めに使うお祓い棒です。そしてお清めは当然、神様に向かってするのではなく人や場に対して行います。
つまり、霊夢が持っているお祓い棒は捧げものと神様の依り代のどちらの意味も持っており、この舞は神社奉納でありながら、スペルカードルール布告のための場を整える清めの儀式でもあるわけです。清めの儀式として考えれば、お客さんに向かっていることは不自然ではありません。
ちなみにもっと細かいことを言うならば、お祓い棒は本来巫女が持つものではありません。でも東方の霊夢は当たり前のようにお祓い棒を持ち、なんなら振り回しているくらいなのでそこは無視しました。
あと、ちょっと馴染みのありそうな点として、「参道の真ん中を歩いていけない」という神社のルール、知っている方も多いのではないでしょうか。神様の正面を「正中」と言い、基本的にそれを沿って歩くことは失礼になります。また、正中を跨ぐときも、一礼してから跨ぐのが理想です。舞台の霊夢は、一礼まではしていませんが、途中まで正中に立たないように演技をしています。まあ正直、霊夢はそんなの気にしない性格だと思うけどね。
で、幻想萬歳楽の終わりかけから霊夢は正中に立ちます。「ダメじゃん!」って思うかもですが、巫女さんには神降ろしというのがありまして。その身に神を宿す行為ですね。正中に立った霊夢は、つまり神降ろしが完了したことを暗示し、そしてスペルカードルールの布告が始まるわけです。

ナレーションの続き。
「人と妖怪の争いにより、やがて崩壊の危機に瀕した幻想郷。崩れかけた世界で、霊夢は妖怪からのとある提案を受け入れた。それは、人と妖怪との関係を大きく変える、新たなる定めであった」
ここらへんからスペルカードルールを布告する前説明が始まるわけです。
「新たなる定めを受け入れ、布告する。今日執り行われるのは、そのための神社奉納」
ここで霊夢の行なっている舞と、ナレーションのストーリーが一致します。そんな重要な部分ですが、実は伝達ミスでナレーションがここだけありません。文字でスクリーンに表示だけはしましたが、伝わったか不安なポイントだったりします。
で、幻想萬歳楽が終了。

「新たなる定めが、いま、告げられる」
このナレーションから間髪いれずに布告ノ儀が始まり、最初の歌詞である「告げる!!」が歌われます。
この、ナレーションの「告げられる」と、歌詞の「告げる」の呼応は、3月からずっとやりたいと思っていた演出の一つです。
そして布告ノ儀が始まった瞬間、柔らかい赤やオレンジに包まれていた舞台が青っぽく染まります。この色の演出は、実は舞台照明の色ではなく、プロジェクター映像自体にうっすらとつけた色によって引き起こされています。

そして古語によって述べられていく挨拶の言葉↓
ーー告げる
おおまえにこのなにおいて
ともどもきこしめさんと
よろづのひとにあやかしに
あまねくしろしめさんと
まぼろしのついえぬために
かくつくさしめたまへと
あらたなるさだめのために
かくかしこみもうすこと

歌詞はひらがなですが、字幕は漢字にしました。非常に悩みましたが、漢字の方が舞台として重厚な感じが出せるかなと。
あ、記憶で歌詞書いてるので若干違ったらごめんなさい。

ーー告げる
大前にこの名において
共々聞こしめさんと
万の人に妖に
遍く知らしめさんと
幻の潰えぬために
斯く尽くさしめ給へと
新たなる定めのために
斯く畏み申すこと

古語ですので、観客に意味を理解してもらうつもりはありませんでした。ただ、古語による楽曲の味、雰囲気を、ただそのまま感じて欲しかった。「たまへ、とか言ってる、ウケる!」みたいな感じに思っていただけていたら嬉しいです。
せっかくなので適当に意味も書いておきます。たぶん間違ってますが何となくこんな感じのはず、、↓
告げる
偉大なる博麗神の御前にて申し上げる
すべての人間と妖怪に広く知れわたれ
幻想郷が潰えぬために此れに従え
新しいルール公布のためかしこみ申し上げる

で、この挨拶パートが終わったら、曲のボリュームがちょっと下がり、ナレーションと映像によるスペルカードルール解説パートに入ります。
まず、舞台にやっと魔理沙が入場。そして霊夢魔理沙の端的な紹介フリップが映像に出てくるので、それに合わせてお客さんへ一礼。ほんとに、素晴らしく固い演技です。

「一つ、美しさと思念に勝るものはなし。人間も妖怪も、その力で相手をねじ伏せることなく。放つ攻撃の美しさで相手をねじ伏せる。誰も傷つくことなき決闘。それが、新たなる定めとなる決闘法、命名決闘法(スペルカードルール)」
ここのナレーションとか映像とかは、もう少し熟考したかったと思います。特に、力と美しさの対比を弾幕で表現するパートは、もう少しいい表現が出来なかったかな〜と思うことが。しかしこれを端的に伝えることは相当難しいので、結局最善は尽くせたのだろうとも思っています。

霊夢と、その友人である魔理沙は、いま、演武として、神に捧げる」
スクリーンに霊夢のスペルカードが6つ表示されます。綺麗ですよね。完成映像を見たとき、私が最も限界化したのはこの瞬間です。

「その、新たなる美しき決闘を」
倒置法です。こんなにエモい倒置法は無いと思いました。
このナレーションを皮切りに、ついに布告ノ儀の本パートが流れ出します。盛り上がる曲、溢れ出す弾幕映像。ここの映像音源は完璧だと思いました。

曲中のダンスは、魔理沙霊夢のスペルカードルールを用いた模擬決闘という設定です。そのため、霊夢魔理沙も曲中でいくつかの弾幕を放ちます。
そのため、プロジェクターと演者の立ち位置を合わせるのが大変でした。今年のダンスは難しい動きをしていませんが、立ち位置の微調整は本当に難しかったです。一応プロジェクター使って練習したりしていましたが、本番プロジェクターでやると練習とは細かい位置が違うという。苦労ポイントです。

なお、この曲の歌詞は全部文字起こししてお客さんに音読してもらいたいくらい舞台ストーリーと関わっています。舞台はこの曲を元に作られているので当たり前ですが。

強き敵。
あなたはどうして。
それを宣び。
それに思いを馳せるの。
その手に握るイデオロギー 意志を符名にして
→「美しさと思念に勝るものなし」。スペルカードにはそのキャラクターのアイデンティティ、思念が詰め込まれています。その意志を符名(スペカ名)にして所持するわけです。

転換する世界は
新たな規律を擁して
今 秩序無き 弾闘に 新たな美学を添えて
→変わりゆく世界に施行される新たなる定め、スペルカードルール。

風に袖を靡かせて 自由に空を翔る姿
空を埋め尽くす弾幕に 相対する昂揚は たとえる術などなく
→サビで霊夢の感情が初めて表出します。

戦うことなど目指さず 競うはただただ美しく
→予選舞台を一言で言うとこれです。

今 容赦無き 楽園に 素敵に慈悲無き力を
携えて 撃ち放つ それが博麗(わたし)という名のスペルカード
→「博麗(わたし)という名のスペルカード」……エモすぎる……舞台で使いたかった……。泣く泣くカットした部分です。

さあ来い その意味の全て この身にぶつけてみせるがいい
廻り廻る意味を見出した
この身に溢れる力の全てをこの手に掲げて
→さあお前の思念をこめた弾幕を私にぶつけてみせろと。私はそれを私の思念をもって受け止めてやると。そして始まるわけです。霊夢のスペルカードが!

――――
ずっと傍にあった 不思議な陰陽玉
→ スペルカード1枚目、宝具「陰陽鬼神玉」 。陰陽玉は、原作において霊夢の最初の武器です。舞台では、弾幕を背景にしながら、霊夢が二つの陰陽玉を両手で操作するような動きを見せます。このスペルカードは原作シューティングゲームではなく、格闘ゲームに登場するものです。したがって、弾幕映像は元ネタなど無い割とオリジナル。

――――
この針と供に 全ての敵を貫く
→スペルカード2枚目、「パスウェイジョンニードル」。針巫女ですね。東方知ってる人ならばわかると思いますが、これはもともとスペルカードではなく、本来ならば霊夢が自機のときの通常ショットです。しかし弾幕アマノジャクという番外編ゲームにて初めてスペルカード化されました。舞台における弾幕映像はそれが元ネタとなっています。カラフルな球が飛んでいく様は、霊夢のスペルカードの中では若干特殊かも? そして針の表現として、細長い弾幕が画面を駆け抜けます。

――――
この身より放つ 夢想の光は強く
→スペルカード3枚目、霊符「夢想封印」。東方永夜抄4面にて霊夢が放ってくるスペルカード、「夢想封印 散」が元ネタです。単純放射の弾幕なので舞台では埋もれがちだったかも?

――――
果て度無く広がる 陣をして捉えよう
→スペルカード4枚目、夢符「封魔陣」。そういえは夢想封印も封魔陣も、東方紅魔郷霊夢自機ボムがたぶん初出なので、もともとスペルカードじゃなかったですね。でも永夜抄でスペルカード化されたって言っても昔すぎるので……。さて封魔陣ですが、やはり東方永夜抄4面で霊夢が放ってくるスペルカードが元ネタ。舞台では霊夢が手を引くと同時に弾幕が追加展開され、星型の図形が現れます。単純だけど良い演出だと思います。

――――
二重なる結界 境界を消し去って
→スペルカード5枚目、夢符「二重結界」。これも永夜抄です。ただし舞台で用いた映像の元ネタは二重結界ではなく、「二重弾幕結界」というスペルカード。歌詞が示唆しているのは二重なる結界ということなので、たぶんどちらでも大丈夫だなと考え、私が好きな方のスペルカードを選びました。
ちなみにめちゃくちゃ映像に苦労したスペルカードです。語ると長くなります。

――――
この身の無名の力にも――――いつか。
→ 後の「夢想天生」。 このスペルカードは、今回の舞台において、かなーーり特殊な意味を持ちます。まず今回の舞台内容ですが、もちろんスペルカードルールを布告する儀式です。スペルカードが初めて用いられたのは東方紅魔郷なので、この舞台の時系列はそれより前となります。となると、「後の」夢想天生と書いたように、少なくともこの時点でこれは無名の奥義であり、スペルカードとしては存在しません。スクリーンにずっと表示されていたスペルカードの最後の一枚だけ、真っ暗で何も描かれていないことにお気づきだったでしょうか。で、この奥義は後に魔理沙によって名前を与えられ、スペルカード化します。それを暗示するため、このスペルカード映像中だけは魔理沙が介入し、お祓い棒を霊夢に渡す=スペルカードに名前を与えるという演出が行われています。そして弾幕映像では、特に何も意味のない、白く大量の弾が円形に広がっていきます。まだ不定形であることの表現です。

ーーーー

そしてスペルカードのパートが終わったら予選舞台は大大円へ。
久しぶりにナレーションが入ります。
「この決闘法は後に、弾幕ごっこと呼ばれた。それは、争いの災禍に代わって、幻想郷を照らす光となるのであった」
めでたしめでたしですね。ちなみに、ここで初めて「弾幕」という言葉が登場します。それによって、ああ今見せられたこれが弾幕なんだなと、無意識に理解していただくことが狙いです。私が原案で言った「東方を紹介する舞台」というのがここらへんで達成させているつもりです。

決勝

決勝は予選ほどの意味密度はないので安心(?)してください。
まず決勝はナレーションではなく歌で舞台が始まります。

Look at the sky...
What a starry night...
Uh...

この部分だけ、楽曲の速度を75%にしてしっとりと表現しています。舞台の導入なので、ゆっくりめに。
魔理沙の立ち位置は舞台後方の真ん中。ぴったりスクリーンの中心に収まる位置です。この立ち位置を利用して、演者に向けて漫画の吹き出しのようにして歌詞を表示していきます。歌詞と魔理沙のセリフは同じなんだとと理解してもらうためです。

そしてナレーション。
「これは、少し昔のお話。大空に、星空に、そしていつか見た、空をかける巫女の姿に。少女は強い憧れを抱いていた」
昔、というのは予選演技の時間軸に対しての昔です。

一曲目、スターシーカー 。
幼少期、実家住み時代の魔理沙が空への憧れ、舞台としてはそんな空を飛ぶ巫女への憧れも謳った曲。
本当は、実家時代の魔理沙の専用服(和服)を用意したかったのですが、どう頑張っても舞台として成り立たないため断念しました。
舞台ではやはり、吹き出しを用いてセリフ兼歌詞を表示していきます。しかし魔理沙も結構大きく舞台を動き回るので、セリフ表示と魔理沙の位置関係はとても繊細です。計算され尽くしたその動きをご覧ください(もう終わっちゃったけど)。

吹き出し以外の映像は、決勝担当の相方からの要望も取り入れて作ってみました。かなり良い演出に仕上がったんじゃないかなと。

ナレーション。
「魔法使いになる、少女はそう決心した。満点の星空を自由に飛び回り、あの空飛ぶ巫女の姿に自らが並び立つため」
魔理沙は実家を飛び出し、家族と決別し、一人で魔法使いを目指すわけです。
ちなみに、「魔理沙」なんて名前、商家の親が自分の娘につけるでしょうか? 「魔」、ですよ。これは原作設定としては何も言及されていませんが、魔法使いになると決心し、家を飛び出した魔理沙が自分で名前をつけた説があります。もともとの名前は「霧雨理沙」である……かも??

二曲目、スターゲイザー

企画さん「セカオワですか!!」
私「あ、違います」
申し訳ねえ。

ナレーション。
「……しかし、それは苦悩の始まりであった」

この曲すごい曲でして、魔法使いに憧れつつも、その道の果てしなさに絶望する魔理沙の複雑な感情がありありと表現されています。東方には魔理沙いぢめという文化がありますが、作者様は魔理沙いぢめのスペシャリストですね。

舞台では霊夢が登場。しかし霊夢魔理沙のことなど眼中にありません。ただの人間なので別段興味がないのです。
魔理沙は憧れの霊夢に対して手を伸ばしますが、霊夢は意に介せずそれをひらりとかわしてすれ違います。
この曲中はもはやダンスではありません。ひたすら感情のままを表現する魔理沙と、特に気にせず日常を過ごす霊夢。そんな対比表現をひたすら行なっています。
原作魔理沙の性格を考えるならば、魔理沙は自分の苦労や努力をひた隠しにするタイプなので、負の感情むきだしの魔理沙は東方民にとっては新鮮だったのではないでしょうか。魔理沙いぢめが捗りますね。

しかし曲中、魔理沙は覚悟を決めます。
歌詞です↓

星が高い。星が遠い。
あの全ての中の一つに
あなたもいるのだろうか
ならばと睨みつけるのは
スターゲイザー(星を見る人)たる私
どれほど俯いたとしても
捨てられないんだー!

魔法使いになるため、霊夢に並び立つため、決して諦めない。その強い思いを感じ取り、霊夢はやっと魔理沙を目に留めます。
そしてサビ↓

ずっと遠い道でも ずっと高い道でも
足を止めることだけは決して出来ない
そう諦めたなら 背を向けた全てに
いつか胸を張ることも出来なくなるから

霊夢は試すように魔理沙をあしらいますが、魔理沙は諦めずに進み続けます。そしてその末、魔理沙がついに魔法使いとなった時。霊夢魔理沙を認めて並び立つのです。
めでたしめでたし……

ここらへん、まじでわたしが書いた同人誌と言っても過言ではありません。だって絶対こんな展開、原作ではありえないじゃん……
ちなみに私は、魔理沙は魔法使いになれるまで霊夢の前には現れなかったと思います。あの魔理沙霊夢に対して弱みを見せるわけない、って考えです。
まってこれミスコンと関係ないわ。話戻さなきゃ、、

ナレーション。
「諦めない、ただその決意の末、少女はついに空を翔け上がった」

三曲目、無題「空飛ぶ巫女と普通の魔法使いのいつもの毎日」

ついに霊夢と並び立った魔理沙が、日常として霊夢弾幕ごっこを繰り広げます。
霊夢にとっては、スペルカードルールを制定したことによって勝ち取った日常。魔理沙にとっては、魔法使いになったことで勝ち取った日常。予選と決勝、まったく異なる思いを抱いていたはずの二人の主人公が、全く異なるそれぞれのアプローチの結果、全く同じ日常を勝ち得るのです。神がかった舞台構成ですね(自画自賛)。

1,2,3,4,5,6 の掛け声に合わせて、スクリーンに魔理沙のスペルカード6つが順番に表示されていきます。この演出も、3月くらいの時点でずっとやりたいと思っていた演出です。

そしてやはり、歌詞を起こして音読してほしいくらい素晴らしいです↓

いつも考える
遊ぶ その意味を
どうしてその手を高く伸ばすのか
けれどそこには意味など
けしてないのかも
相手に押し付ける“符”なんて
→予選の歌い出し、霊夢の想いと対応する魔理沙の想いです。霊夢と違って魔理沙は、相手に自分のスペルカード(思念)をたたきつけることに、そこまで意味はないのかも、と思っています。

この手には何もかも無くて
だけどやめる事は出来なくて
だってこんなに楽しいことに
手を染めないのはどうなのかと
→予選では重厚な世界観で説明されたスペルカードルールですが、魔理沙はただ楽しい遊びであると感じています。

独り善がりでもいいんだ
そう教えてくれたのは
なあお前は 気付いているのか
お前 笑っているんだぜ
→しかし、魔理沙は気がついています。霊夢自身も、幻想郷を守る役目とか以前に、スペルカードルールを楽しんでいることに。

そうだ 空へと高く
その姿に並ぶよう
同じ空を切り取る影となる
→ついに並び立った二人の姿、ですね。

私が思う一つ一つの“意味”
お前にただ叩きつけたいんだ
→今度は魔理沙がスペルカードを霊夢へと叩きつけます。ただ、それが楽しいから。

さあ 新たなる“ルール”の下で!
→舞台ではここでちょっと霊夢が中心に立つのがエモいポイントです。予選で布告した新たなるルール、もちろんスペルカードルールのことです。

あとはもう私が語るまでもないので歌詞だけ載っけるオタクになります。。↓

勝つとか負けるとか
そういうんじゃないんだ
気持ちよければそれで全ていいんだ

それにただただお前と
同じ空を飛翔ぶ
それだけでどこか楽しい気がするから

これが少女達の遊びなら
命短し遊べよ乙女
恋にかまけてさえもいられない
そういうのは符の中で

今日という一日には
名前なんて無いけど

なあお前も わかってるんだろう
今日も 楽しそうなんだぜ

だから 空へと高く
その姿に並ぶよう
同じ息吹を感じる風となる

不思議で素敵なこの楽園の空に
二人だけの世界を作るように

さあ 掲げようこの全てを!

いつか全て終わるとして
それでも明日はきっと来るはずだから

だから 空へと高く
その姿に並ぶよう
お前の前でずっと笑っていよう

私の“符名”はまだ“不明”から
今は全てを楽しんでいたい

さあ この空に向かって
思いをこめて、掲げよう、この全てを!


ふぅ……(自己満足)
で、舞台のラスト。やっぱり始まるわけです。魔理沙のスペルカードが!

魔理沙のスペルカードは全てが永夜抄が元ネタの弾幕です。

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ミルキーウェイ
広がれ! かつて見た天の川のように――
→ 魔符「ミルキーウェイ」。天の川がモチーフとなっているスペルカードです。星空に憧れた魔理沙の思念がまさに詰まっています。原作弾幕ではカラフルな弾幕ですが、より天の川っぽくするために色を青系に統一しました。あと、天の川っぽく弾幕を広げるようにプログラムするのが大変でした。

ーーーー
スターダスト!
散らばれ! 甘い幻想は星屑のごとく――
→ 魔符「スターダストレヴァリエ」。 星屑ですね。原作では小さな星弾が非常に面白い軌道を描く楽しい弾幕です。舞台で見せられるのは一瞬の時間なので、私が綺麗だと思った1つのパターンの動きだけを作って見せました。

ーーーー
ノンディレクショナル!
追い詰めろ! 私の魔法に死角などない――
→ 恋符「ノンディレクショナルレーザー」。明言はされていませんが、実は東方紅魔郷に登場するキャラクターであるパチュリー・ノーレッジが放つ弾幕魔理沙が盗んだ(?)もの。しかし本当に綺麗な弾幕で、今回制作した魔理沙弾幕の中では一番のお気に入りです。再現弾幕なので私が考えたわけじゃありませんが!

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マスタースパーク!
弾けろ! 全力全開全て全壊――
→ 恋符「マスタースパーク」。お馴染みのマスパです。舞台では当然、マスパを放つジェスチャー魔理沙がするのですが、それが完璧です。おかげで良い演出になりました。

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アースライトレイ!
輝け! 天を照らす地上の星――
→ 光符「アースライトレイ」。これは再現度の高いものが出来たのですが、舞台映えしにくい弾幕だったので色々と追加しました。それによって再現度が下がってしまったのですが仕方なしです。

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ブレイジングスター!
飛ぶんだ! 最速の流れ星となって――
→ 「ブレイジングスター」。 マスパと並ぶ、魔理沙の象徴的なド派手弾幕です。これは偶然なのですが、良い感じに予選の夢想天生と対になるように、物量で画面を埋め尽くす弾幕になりました。

ーーーー

そして舞台は終了へと向かいます。
二人の日常に、もはやナレーションなど要りません。タガが外れたように、思い思いに舞台を動き回る二人。そして、最後は舞台の中心で、二人の弾が混じった花火のような弾幕によって、幕が降ります。


これで、2019年度ミスコン、博麗神社萬歳楽の舞台解説記事は終了です。
相変わらず自分語り1000%の記事で申し訳ありません。ここまで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます。

次は当日の話や他団体についてなど、やっとミスコン記事っぽいことを書けると思います。